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専門医インタビュー

膝が変われば、人生が変わる! 自分のゴールを目指し、適切な治療法を選択しよう。

この記事の専門医

福井県

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日本整形外科学会認定専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本テニス協会医事委員会北信越地区メディカルサポートドクター、全日本スキー連盟公認ドクターパトロール。専攻分野はスポーツ医学、関節外科。

この記事の目次

高位脛骨骨切り術(HTO)という手術方法について教えてください。

高位脛骨骨切り術(HTO)の種類

オープンウエッジ法

脛骨の内側から外に向かって骨を
切り、開いて人工骨を入れ金属で
固定する方法。
クローズドウエッジ法より侵襲が
少なく手術時間が短い一方で、
矯正の角度に限度がある

クローズドウエッジ法

脛骨の外側から骨を楔状に切り
取り、短縮させて矯正する方法。
変形が強い人でも可能だが、オー
プンウエッジ法より侵襲が大きく
なる

高位脛骨骨切り術(HTO)とは、脚の形をO脚からX脚に変える手術で、内側に偏っている過重ストレスを、自分の骨を切って角度を変えることで、反対の外側に移動させます。自分の関節を温存し、機能を維持することができるため、術後の日常生活にほとんど制限がありません。高位脛骨骨切り術には、大きく2種類、オープンウエッジ法とクローズドウエッジ法があります。オープンウエッジ法は、脛骨の内側から外側に向かって骨を切り、内側を開いて矯正する方法で、近年の主流ですが、矯正の角度に限度があり、当院では膝が5度まで伸びない方には行なっていません。クローズドウエッジ法は、脛骨の外側から骨をくさび状に切り、短縮させて矯正する方法で、ある程度矯正の角度が大きい方でも対応可能ですが、多少、侵襲が大きくなります。当院では膝が10度まで伸びれば対応しています。 現在、高位脛骨骨切り術を行なっている人の平均年齢は65歳弱ですが、全身症状さえ問題なければ、年齢制限は設けていません。80代の方でも行っています。ただし、10度以上膝が伸びない方に関しては、やはり、人工膝関節置換術が適切な選択だと思いますね。

以前は、回復するのに時間がかかったと聞きますが。

高位脛骨骨切り術後のX線

最近の高位脛骨骨切り術は新しい手術方法が開発され、術後早期からの歩行も可能になっているので、入院期間も人工膝関節置換術とほとんど変わらず、入院期間は共に4週間~6週間です。高位脛骨骨切り術の場合、術後1週間位から徐々に膝に体重をかけ始め、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を行ない、4週間~5週間で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアして退院となります。手術時間は、オープンウエッジ法で1時間弱・クローズドウエッジ法で約1時間半ですから、これも人工膝関節置換術とほぼ変わりません。ただし、術後の可動域は圧倒的に高位脛骨骨切り術のほうがいいですね。スポーツにも正座にも制限がありません。また、出血量が少ないため手術中の輸血の必要がなく、炎症を起こすリスクも低いため、患者さんの負担がより少なくて済みます。

高位脛骨骨切り術の適応となる基準は何でしょう?

変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わるといった疾患ではありません。従って、どのような治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりが望むゴールによって変わってきます。人工膝関節置換術は、近年、手術成績が非常に良く、術後の日常生活においても不自由なことはほとんどない、安定したいい手術です。しかし、激しいスポーツや登山など、活動量の高い動きになると自由の利かないところがあります。 例えば60代で可動域が悪い人でも、「痛みが取れて、近所に買い物に行ければいい」のがゴールであれば、無理に手術を行う必要はまったくありません。軽度であれば保存療法で経過をみてもいいし、変形が進んでいれば人工膝関節置換術を選択するのもいいでしょう。ただし、80代であっても、「登山が生きがいなのでこれからも続けたい」、「日本舞踊が長年の趣味なのであきらめたくない」といったゴールがあるのなら、「そこを目指して頑張りましょう。そのためには高位脛骨骨切り術で自分の関節を温存できるようにしましょうね」という風にお話ししています。


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