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専門医インタビュー

早期発見・治療が大切な肘のスポーツ障害。低侵襲な関節鏡下手術で対応できるケースも増えています。

この記事の専門医

  • 西中 直也 先生
  • 昭和大学保健医療学部理学療法学科 教授
    昭和大学藤が丘病院 整形外科
    昭和大学スポーツ運動科学研究所
  • 045-971-1151

神奈川県

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専門分野:肩肘関節外科、肩肘関節鏡手術、肩のバイオメカニクス、投球肩肘障害
資格・所属学会:日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会スポーツ医、日本整形外科学会認定リバース型人工関節置換術施行資格医師、日本肩関節学会代議員、日本肘関節学会評議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員

この記事の目次

テニス肘、ゴルフ肘の治療はどのように進めますか?

テニス肘やゴルフ肘については、多くの場合オーバーユースと加齢による腱の変性が原因のため、まずは痛みの出る動作を避けて安静にします。また、患者さんの症状に合わせたストレッチや筋力トレーニング、セルフマッサージを行います。肘周囲の筋肉を揉みほぐしたり、指を下にして片腕をまっすぐ前に伸ばして反対の手で引っ張るストレッチなどは代表的です。これらのリハビリは、痛みの予防としても大切ですので、プレーの前に習慣づけてほしいと思います。
ステロイド注射も有効です。ただし、3回ほど試して効果がない場合それ以上の注射は副作用の方が大きくなりますので、見極めが必要になります。その他の保存療法としては、痛み止めの内服や、エルボーバンドと呼ばれる肘用のサポーター、また保険適用外ではありますが、再生医療の多血小板血漿(PRP)療法や体外衝撃波(ショックウェーブ)治療が選択されることもあります。こうした保存療法で十分に痛みが改善しなければ手術を検討します。

ストレッチの一例
ストレッチの一例

野球肘の治療はどのように進めますか?

子どもの内側型野球肘は、投球練習を休んで安静にしていれば軽快することがほとんどです。成人の野球肘として知られる内側副靭帯損傷も同様で、安静が主な治療法になりますが、重症例では「トミー・ジョン手術」として知られる靭帯再建手術が必要になることもあります。休養により痛みがとれて復帰する際には、再発を防げるように投球フォームをしっかりと確認し、修正していくことが欠かせません。
外側型と呼ばれる離断性骨軟骨炎(OCD)であっても、初期段階であれば安静にすることで自然修復を期待できます。一方、気づかないままに進行した場合は、関節の中で骨軟骨が剥がれて病変部が不安定になっていきます。
こうなると保存療法では改善が望めなくなることがあり、手術が選択肢となります。

肘のスポーツ障害の手術療法について教えてください。

病変の種類や進行度に応じて、それぞれの手術方法があります。テニス肘で微小断裂が進み、保存療法で痛みがとれないようであれば、関節鏡を使った手術を行います。肘をわずかだけ切開し、カメラを入れて患部を見ながら、痛みを引き起こす原因となっている傷んだ組織を取り除くものです。断裂が激しければ、関節内の安定性を高めるために靭帯を縫合する修復術を行います。
テニス肘に比べ、内側に痛みが出るゴルフ肘で手術が必要となるケースは多くありません。ゴルフ肘は関節外にある筋腱や靭帯に関わる疾患で、傷んだ組織を切除すれば改善が期待できます。
関節鏡下手術は体への負担が小さく、野球肘のOCDでも用いられています。関節内の遊離体を除去したり、分離した軟骨骨片を骨釘(患者さん自身の骨でつくった釘)で固定するケースなどです。一方、病変部が不安定性で骨軟骨片をくっつけられないような場合は、肋骨から軟骨を移植して病変部を埋める手術(肋骨肋軟骨移植術)を行うこともあります。
なお、OCDを長い期間放置して進行してしまうと、遊離体の除去だけでは可動域の回復が望めなくなってきます。
そうした場合、将来的には人工関節も視野に入れて、病気と長く付き合っていく必要が出てきます。


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