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専門医インタビュー

~より良く、より早い社会復帰のために~ 膝の痛みは我慢せずに、まずは診察を

この記事の専門医

北海道

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岩手医科大学卒業。北海道大学医学部附属病院整形外科入局、以後、道内の複数の病院に勤務。 1992年函館中央病院整形外科医長、1998年函館中央整形外科診療部長を経て、2007年函館整形外科クリニック院長に就任。

この記事の目次

人工膝関節置換術にはいくつか種類があるのですか?

はい。膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(いわゆる、膝のお皿の部分)の3つの骨が組み合わさってできていますが、これら3つ全てを取り替えるのが全置換術です。一方、これらの3つの骨のうち傷んでいる部分だけを人工関節に置き換えるのが部分置換術で 、変形の進行度合いが比較的初期の人が対象になります。手術の主流は全置換術ですが、身体への負担が少なく、部分置換術は患者さんからみれば比較的決断がしやすいためか、日本における手術件数は近年着実に伸びています。部分置換術には、片側の軟骨だけがすり減っていて反対側のすり減りが少ない場合などに用いられる「片側置換術」や膝蓋骨と大腿骨の間の軟骨だけが消失している場合に用いられる「膝蓋大腿関節置換術」などがあります。全置換術と片側置換術は随分前に確立されていましたが、いわゆる「お皿」と呼ばれる膝蓋骨を個別で取り替えられるようになったのは、日本では2011年からです。欧米では早くから行われていましたが、日本ではまだ新しい置換術といえるでしょう。片側置換術と同様に、全置換術よりも骨の切除量が少なく、患者さんの負担も少なくて済むため、これから膝蓋大腿関節置換術も増えていくと思われます。

片側置換術・膝蓋大腿関節置換術のメリットを教えてください。

人工関節(膝蓋大腿関節)の一例

全置換術は先程述べた通り、膝関節を全て取り替えることになります。つまり、軟骨のすり減りが少ない部分があっても、関係なくまとめて取り替えてしまうというわけです。しかし変形性膝関節症では、必ずしも膝関節の全てがダメになってしまっているのではなく、まだ使える部分が残っている場合も少なくありません。また、人工関節はオーダーメイドではありませんので、例えば内側が合っても外側が合わないなど、全ての患者さんの膝にぴったり適合するとはいい切れません。片側置換術や膝蓋大腿関節置換術の場合は、症状が進行している箇所のみを取り替えるため、全置換術に比べると患者さん一人ひとりに合ったインプラントを入れることが可能です。
手術の面では、部分置換術では骨を削る範囲が狭く侵襲も少ないので、より早期の回復を期待できます。手術時の出血量も少なく、全置換術では片膝あたり400~800cc出血しますが、部分置換術では100~200ccほどで済みます。手術時間は全置換術では1時間半~2時間半ですが、部分置換術の片側置換術だけ行った場合は1時間~1時間半、片側置換術と膝蓋大腿関節置換術の両方を行った場合は2時間半くらいです。

片側置換術と膝蓋大腿関節置換術後のX線
(左-正面、右-側面)

気になる入院期間ですが、全置換術は2~3週間必要であるのに対し、部分置換術の場合は10日間程度で退院できます。また、全置換術では大腿骨と脛骨を繋いでいる前後2本の十字靭帯を一緒に取り除くことになりますが、部分置換術であれば靭帯を全て残すことができます。その結果、患者さんが違和感を覚えることなく膝の曲げ伸ばしが自然にできるなど、部分置換術の方がより安定した膝を作ることが可能です。もちろん、症状や手術の効果は患者さん個人で異なりますし、症状や関節の状態によっては全置換術が適応となる場合もあります。ただ、部分置換術という方法があることで、患者さんの選択肢が広がったと思います。診察の結果、部分置換術ができる、つまり残せる部分があると分かった場合には、できる限り部分置換術を行った方が良いと考えています。

手術は誰でも受けることができるのでしょうか?

近年は、はじめから人工膝関節置換術を希望して来院される患者さんも多くなりました。片方を手術したら「とても楽になったので、もう片方も」という患者さんも多く、人工関節というものが社会に浸透し、患者さんも昔ほど抵抗はなくなってきたのかなと感じています。しかし残念ながら、全ての患者さんに手術を行えるわけではありません。特に、内科的に疾患(重度の心臓病や糖尿病など)があったり、高齢で手術のリスクが高いと判断されたりした場合には行うことができません。従って、患者さんご自身が手術を受ける決心をされても、まずは内科的な診断を行い、必要があればそれらの治療を先に行います。手術を受ける人の多くは60歳以上です。手術の適応年齢は、個人差はありますが85歳くらいまでかなと思います。なお、人工関節の本体は金属でできています。病院側からも聞かれると思いますが、金属アレルギーがある人は、必ず事前に担当医師へ相談してください。


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