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専門医インタビュー

~再置換術は最後まで自分の脚で歩くための手術です~ 人工膝関節の不具合は、経験豊かな施設に相談を!

この記事の専門医

東京都

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日本大学医学部卒業。同大整形外科入局。 同助手から、川口市立医療センター、駿河台日大病院、独立行政法人国立災害医療センター勤務などを経て、 2006年苑田会人工関節スポーツセンター長、杉本再生医療研究所院長に就任。2010年から現職に。一般社団法人「人工関節を語る若手研究会」代表。年間600例以上の人工膝関節手術の経験があり、再置換術も多数執刀。

この記事の目次

再置換術後のリハビリテーションについて教えてください。

再置換術では数日後から歩行訓練を開始

多くの再置換術の場合、患者さんがより高齢になってから行いますので、初回よりも術後のリハビリテーションは大変になります。心臓が弱っていることもあるでしょうし、筋力が落ち関節が拘縮していると、歩行機能が悪くなっている場合もあります。術後は、手術の翌日から少しずつ体を動かします。通常の人工膝関節置換術では手術の翌日から歩きますが、再置換術の場合は、数日様子をみてから歩行訓練を開始します。自由に膝の曲げ伸ばしができるようになるには、多少時間がかかります。個人差がありますが、多くの人は術後2カ月ごろから運動機能が向上するようです。リハビリテーションの内容は初回と変わりませんが、靭帯や腱が弱い人は時間をかけてゆっくりと行います。しばらく歩けなかった患者さんの中には、筋肉が硬くなっている人も多くいます。このような患者さんには、トレーニングの前にマッサージや電気をかけることで、筋肉を柔らかくしたり伸ばしたりしてから可動域訓練に入るなど、ひと手間をかけるようにしています。退院後も通える人は週に1回リハビリに通ってもらいますし、遠方の人の場合は近所で指導してもらえる施設を紹介しています。膝を甦らせ、もう一度、自分の脚で歩くことができるようになるためにも、再置換術後のリハビリテーションは非常に重要です。

術後の患者さんの様子はどうですか?

再置換術後は、初回の手術後とほぼ同じくらいの身体機能、日常動作の回復が得られます。再び旅行を楽しめるようになった、買い物にも行けると喜んでいる患者さんはたくさんいます。ゴルフやソーシャルダンスを楽しんでいる人もいます。「痛みや具合の悪さを我慢して諦めていたけれど、思い切って再置換術を受けてよかった」といわれます。再置換術を余儀なくされ、メンタル的な悩みについて相談を受けることもありますが、術後一定期間を経過すると皆さん晴れやかな表情で来院されます。再置換術については、手術器械や環境が整ってきており格別に難しい手術ではなくなってきましたが、「人工膝関節の具合が悪ければ安全に再置換できる」ということは、まだまだ知られていないのが現状でしょう。「長い間使ってきた人工関節がすり減ったのなら仕方がない、取り替えましょう」と、前向きに考えていただければと思います。

人工膝関節の再置換術を受けた患者さんの体験談

術後の人工関節の緩みの場合(男性)
術後の骨折、膝内側側副靱帯破綻の場合(女性)

人工関節を長持ちさせるポイントについて教えてください。

基本的には初回の時と同様です。特にしてはいけないことはありませんが、転倒しないように気をつけてください。転倒の原因には、下肢の筋力低下やバランス能力の低下などがあげられます。また、肥満は再置換術になる原因の一つですので、体重管理に気を配りましょう。筋力をつけて関節の状態を維持するためにも、適度な運動は退院後も継続してください。ただし、深くしゃがみ込むような姿勢や膝を過剰にひねるような運動は、人工関節への負担が大きくなりますので避けてください。スポーツや大きく体を動かすようなレクリエーションを行う場合には、事前に主治医に相談するのがよいでしょう。術後1~3カ月の間に注意しなければいけないのが感染症です。人工関節を入れた部分が腫れて赤みを帯びる・熱っぽいときには、すぐに受診してください。

人工関節を長持ちさせるポイント

  • 転倒防止 歩行時に杖を使用するとともに、下肢の筋力をつけ関節の状態を維持
  • 体重管理 肥満にならないよう、適度な運動を継続
  • 人工関節の負担軽減 深くしゃがみ込むような姿勢や過剰にひねるような動作を避ける
  • 感染防止 日頃から身体を清潔にするとともに、病気に罹ったらすぐに治療を

患者さんへのメッセージをお願いします。

人工関節を入れた後、痛みが出たり違和感を覚えたりしたら、それは何か問題が起こっているというシグナルです。決してそのまま放置せず、まずは専門医に原因を調べてもらいましょう。必ず解決策はありますので、絶対に諦めないでください。厄介なのは、人工関節が緩んだとしても、気づかずに動き続けてしまうことです。人工関節の緩みを放置しておくと、知らない間に状態は悪化してしまいます。自分では分からなくても、定期検診をきちんと受けていれば、人工関節が緩んでいるのはレントゲン検査ですぐに分かります。再置換術後も、1年に1度の定期検診は欠かさずに必ず受けてください。

以前、人工膝関節置換術は60代以降になるまで待つという目安がありました。しかし今では、膝関節の具合が悪くて日常生活に支障が出ているのであれば、本人にとって都合のいいタイミングで手術を受けて、充実した50代.60代を送ってほしいと思っています。もし、30年経過して何かしらの不具合が出てきたら、その時は、もう一度人工関節を入れ直せばいいのです。初回から再置換術を視野に入れて手術を受ければ、適切な手術タイミングを逃さずに済みますし、何よりも治療の選択肢が広がります。もはや、再置換術は特別な手術ではありません。人工関節の不具合で歩くことができなくなる前に、できれば「再置換術」の経験が豊富な施設・医師に相談してみてください。きっと、今の人工関節の何が問題なのか、分かりやすく説明してくれると思います。


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