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専門医インタビュー

手術は、人生をどう過ごしたいかを考えて決めましょう! 変形性膝関節症と人工膝関節置換術について

この記事の専門医

和歌山県

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大阪市立大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性疾患制御講座特任教授。 日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

この記事の目次

人工膝関節置換術に年齢制限はあるのでしょうか?

人工膝関節置換後のX線

人工膝関節置換術は、傷んだ膝の骨と軟骨を削り取り、代わりに人工の関節に置き換えて膝の痛みを取り除く治療法です。上下の骨と接している部分には金属製のインプラントを被せ、その間に軟骨の代わりになる高分子量ポリエチレンのプレートを挿入します。人工膝関節置換術は、症状が悪化した患者さんに対する最終的な治療法といえるでしょう。手術年齢としては、全身状態に問題がなく麻酔が可能な状態であれば、特に制限はありません。80代の人でも普通に人工膝関節置換術を受けています。人工膝関節置換術は、日本全国で8万件以上も行われている手術で、治療成績も良くごく身近な手術になりました。昔は、膝が痛くても「歳だから仕方がないわ」とあきらめてしまう人が多かったようですが、最近の高齢者はお元気で、いくつになっても前向きに手術を考える人が増えたように感じます。術後にゴルフやジョギングを楽しむ人もいますし、本当はあまりお勧めできないのですが、畑仕事に精を出している人もたくさんいますよ。

両膝が痛い場合、両側同時に手術を受けることはできますか?

できます。ただし、片側手術に比べて患者さんの侵襲や出血量が多くなるため、当院では70歳未満で体力のある人に対してのみ行っています。手術時間は、片側ずつ手術を行いますので、1時間半+1時間半で約3時間です。両側同時手術の場合、手術時間は倍になりますが、リハビリ期間は片側とほぼ同じで済みますから、片側ずつ2回手術するより入院期間が短縮できるメリットがあります。また、手術も麻酔も1回で済むので、患者さんの精神的・身体的負担の軽減にもつながっているといえるでしょう。リスクとしては麻酔時間が長いことと出血量の増加があげられますが、当院ではトランサミンという止血剤で出血コントロールを行っているため、両側同時手術にも関わらず自己血輸血を一切行わずに済んでいます。トランサミンによる出血コントロールは、海外の論文でもその有効性が報告されています。

術後のリハビリから退院までの流れを教えてください。

リハビリは、できるだけ早い段階から
始めます


畳から立ち上がる練習やお風呂に入る
練習も行います

術後は、できるだけ早い段階からリハビリを始めます。人工膝関節置換術の合併症として、術後の血流が悪くなることで太ももやふくらはぎに血の塊ができる「深部静脈血栓症」がありますが、この合併症は長時間脚を動かさずに同じ姿勢でいることで起こりますから、早くからリハビリを行うことはその予防にもつながります。流れとしては、術後当日からベッドの上で脚のつま先を動かしてもらい、翌日からは理学療法士の指導のもとリハビリを開始します。1日目はまだ歩けなくても構いませんので、少なくともベッドから離れ、立つところまで頑張ってもらいます。入院期間は約3週間、両側同時手術の場合は4週間前後です。最初の1週間で膝の可動域訓練として90度くらいまで曲がるのを目指し、2週目では距離や速さなど歩行のレベルアップを図ります。個人差はありますが、杖1本で歩けるようになるのが退院の目安です。退院までには、実際に自分の家に帰った時を想定して、畳から立ち上がる練習やお風呂に入る練習も行い、日常生活に困らない程度までリハビリをしっかりと行ってから退院となります。退院後はまだ人工関節が身体に馴染んでいませんので、医師の指示する頻度で定期検診を受けてください。退院1カ月後、その後は1~2カ月に一度、何も問題がなければ半年~1年に一度定期検診を行い、レントゲン検査で人工関節の状態をチェックします。


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