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専門医インタビュー

~持病があっても諦めないで!対応できる施設があるかもしれません~ 膝の痛みの原因と人工膝関節置換術

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愛知県

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日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医、日本リウマチ財団登録医

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人工膝関節置換術について教えてください。

人工膝関節単顆置換術は膝関節の片側(主に内側)だけを人工関節に置き換えるので、膝関節をすべて置き換える全置換術に比べて軽い侵襲で済みます。反対側(主に外側)の半月板や前十字靭帯など、自分の組織をかなり多く残せるために膝の安定性も高く、術前に膝が良く曲がっていた人は術後も同レベルの屈曲を獲得できるでしょう。内側も外側も軟骨のすり減りがひどく歩行が困難な人に対しては、やはり人工膝関節全置換術が適応になりますが、この手術は治療成績も良く安定した手術ですから、むやみに怖がる必要はありません。

両側同時手術後のX線

なおご本人の希望があれば、両側同時手術も行っています。両膝が同じ程度悪い場合は、片方の脚だけ手術を受けても手術をしていないもう片方の脚が痛く、リハビリがうまく進まないことが多くあります。また変形が強度の場合、左右の脚の長さが逆に大きくなってしまう場合もありますが、両側同時の場合は脚の長さを揃えられるため歩行がより安定し、術後のリハビリがスムーズに進むという特徴があります。手術時間は片側の約2倍で、約2時間半です。侵襲が2倍になるので出血量が2倍になりますが、入院期間は片側とほぼ変わりません。手術が1回で済むことと入院期間が短縮できることが両側同時手術のメリットといえるかもしれませんね。

人工関節はどのように骨へ固定されるのですか?

セメントレス固定の人工膝関節
表面には細かい凹凸が加工されており、
この凹凸に骨が固着し直接固定されます

人工関節を骨に固定する方法は二つ、セメント固定(間接固定法)とセメントレス固定(直接固定法)です。セメント固定はインプラントと骨との間に固定材(骨セメント)を使用して固定するので、当初の固定力は強固ですが経年劣化の心配があります。一方でセメントレス固定は、インプラントを骨に直接埋め込んで固定する方法です。使用されるインプラントの表面には細かい凹凸を施した特殊な加工がされており、この表面に骨が固着することで、骨セメントを使わずにインプラントを直接固定することができます。この方法で固定できれば将来的に緩むことはほぼなく長期の耐用が期待できますが、しっかりと固定できるまでに約半年かかるため、その間の緩みに気をつけなければなりません。 手術時間は、セメントレス固定の方がセメントと骨の圧着時間が要らない分、短時間で済みます。片側だけの場合、セメント固定であれば1時間半程度必要ですが、セメントレス固定あれば1時間を切るケースもあります。早期の緩みに注意が要りますが、手術時間が短ければそれだけ感染症のリスクも減りますので、セメントレス固定のメリットは大きいといえるでしょう。どちらにするかは患者さんの骨の質によるのですが、最近は人工関節の進化が目覚ましく、ある程度骨の質が弱い人にもセメントレスで対応できる機種が開発されています。

術後のリハビリから退院までの流れを教えてください。

手術当日はベッド上で安静にしてもらいますが、翌日には創に溜まった血液を外に出すための管(ドレーン)を抜き、車イスでトイレに行くなど、できる限り動いてもらうようにしています。ただし、手術後には発熱があり患部も熱を持ちますので、術後1週間はゆっくりとしてもらい、本格的なリハビリ室での歩行訓練は翌週からとなります。その間は、術後翌日からベッド上でCPMという機械を使って、他動的な脚の曲げ伸ばし訓練を行います。2週目からはリハビリ室で平行棒や歩行器を使って歩行訓練を始め、理学療法士さんからOKがでれば、病棟内を歩行器や杖で歩くことができます。3週目にはほとんどの患者さんが杖での歩行が可能になっています。入院期間は平均約3週間ですが、高齢で一人暮らしなど、3週間ではご自宅に戻れないような人には、リハビリテーション病院などの転院先を紹介し、リハビリを続けていただく場合もあります。


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