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専門医インタビュー

膝の痛みで思うような生活ができなくなったら担当医師としっかり話し合い、信頼できる施設で手術を検討!

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長崎県

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日本整形外科学会・整形外科専門医、日本整形外科学会・スポーツ専門医、日本体育協会・スポーツ専門医

この記事の目次

人工膝関節置換術について教えてください。

損傷した関節の表面を取り除き、人工の
膝関節に置き換え痛みを改善します

人工膝関節置換術は、高度に変形が進み立つことも辛く、膝の痛みのために思うような生活ができなくなっている人に対して行う手術で、悪くなった膝関節を取り除き人工の膝関節に置き換えることで痛みを取り除きます。今や全国で年間8万件以上も行われており、麻酔や手術法、手術器械などの進歩のおかげで手術の安全性が以前よりも随分高まっていることから、患者さんを膝の痛みから解放するとても優れた治療法だといえるでしょう。ただし、高齢者に行う手術としては大きな侵襲を伴いますので、慎重に行うべき手術であることに変わりはありません。事前に全身の状態を検査し、手術可能と判断された患者さんが対象となります。

後十字靭帯温存型
人工膝関節の一例

手術時間は約1時間半です。なお、重労働や激しいスポーツといった活動性の高い生活を望む人には、再手術の可能性が高まるのであまり人工膝関節置換術はお勧めしていません。しかし、支障のない日常生活や軽いスポーツ程度をゴールとして目指す人には、とても効果的な手術です。当院では多くの場合、後十字靭帯温存型のインプラントを使用しますが、靭帯を残すことでスムーズな動きを保つことができ、立ち上がり時の安定性にも優れています。中には正座ができるようになる人もいますが、破損リスクがあるので、正座はしないようにお願いしています。

手術の際、やはり輸血が必要になりますか?

術前に自己血を貯めておき輸血に備えていた時期もありましたが、70歳以上の人から自己血を採ると貧血状態になることが多く、貧血状態が十分に改善しないまま手術を行うケースも少なくありませんでした。今では、術中の出血を抑えるために低血圧麻酔を使用するとともに出血に対してはその都度しっかりと止血処理を行い、さらには関節内に止血剤を投与して術後の出血コントロールをしっかり行っています。その結果、術中出血を約200cc、術後出血を100cc以下に抑えることができ、貧血がない患者さんであれば、ほとんどの場合輸血を行わないで手術が済んでいます。また、人工膝関節置換術の合併症には深部静脈血栓症や術後感染などがありますが、血管内皮細胞の損傷原因となるターニケット(止血帯)の使用を避ける、手術はバイオクリーンルームで行うなど、しっかりと予防対策を行っています。

人工膝関節置換術に年齢制限はありますか?

人工膝関節置換術後のX線

全身状態に問題がなくご本人が希望されているのであれば、特に年齢制限は設けていません。私が手術をした最高齢は98歳です。その患者さんは手術の半年後には畑仕事に復帰され、筍を掘ってお土産に持ってきてくださいました。最近の高齢者は元気な人が多いですから、「膝さえ良くなれば何でもできるのに」と前向きに考えられるようです。実際、人生がガラッと変わる人も多いですね。最初は人の肩を借りなければ来院すらできなかった70代の人が、術後に若い頃夢中になっていた卓球を再開し、今では毎年全国大会に出場するまでになっています。人工膝関節置換術に関しては、手術手技の進歩に加え、インプラント自体の進化にも目覚ましいものがあります。私が近年使用しているタンタル素材のインプラントは、セメントで固定しなくても骨との固着にとても優れているのが特徴で、安定性が良いためか術後の歩行訓練時にもほとんど痛みがありません。手術1ヵ月~2ヵ月後のレントゲンチェック時には、すでに固定できているように見えるケースも少なくありませんね。ただし、患者さんの膝関節の状態は様々ですから、一人ひとりにあった人工関節を選択することが重要です。


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