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専門医インタビュー

~痛みがあったら、まずは股関節の専門医へ相談を~ 3D技術による患者さん一人ひとりにあった人工股関節置換術

この記事の専門医

富山県

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日本整形外科学会専門医、変形性股関節症ガイドライン策定委員会委員、日本股関節学会評議員、中部日本整形外科災害外科学会評議員、日本体育協会公認スポーツドクター、石川県ハンドボール協会医科学委員

この記事の目次

技術の進歩に伴って人工関節も進化しているのですか?

人工股関節の一例

人工関節の材質やデザインは日進月歩で進化していますよ。耐用年数が10年といわれていた時代もありましたが、現在は平均で20年以上は持つだろうといわれています。車のタイヤと一緒で、人工関節の一番の弱点は軟骨の働きをするポリエチレンの摩耗です。人工関節の入れ替えが必要になる一番大きな要因も、このポリエチレンの摩耗によるものです。しかし、現在は材質が非常に良くなっていて、以前ほどすり減らなくなりました。ポリエチレンのすり減りを調べるコンピュータソフトがあるのですが、術後10年以上たっているものでもほとんどすり減っていませんでした。これらの現状を踏まえると、今後はもっと耐用年数が長くなるのではないかと思います。現在行われている人工股関節置換術の平均施術年齢は63歳~64歳です。50代では入れ替えの可能性があるのでまだ早いという考えもありますが、人工関節の進化の度合から考えると、50代で手術をしても入れ替る可能性は低い時代になったのではないかと思っています。当院では、患者さんご本人が納得した上で手術を望まれる場合は、50代でも人工股関節置換術を行っています。

人工股関節置換術にはいくつかのアプローチ(切開方法)があると聞きました。

手術のアプローチ方法

人工股関節置換術の主なアプローチには、前方アプローチ、前側方アプローチ、側方アプローチ、後方アプローチなどがあり、それぞれのアプローチに長所と短所があります。当院では前側方アプローチを行っていますが、その長所の一つは脱臼の可能性が低いということです。脱臼のほとんどは後方脱臼なので、後方からアプローチするとダメージによる関節の緩みで、より後方脱臼を起こしやすくなるリスクがあります。一方、前側方アプローチでは、日常生活の姿勢として脱臼肢位も多くなく、筋肉を切らずに筋肉の隙間から股関節に進入しているため、後方アプローチよりも脱臼リスクが低いといわれています。手術手技が高度になるのが難点ですが、侵襲が少ないため、痛みが少なく術後の回復が早い、早期からのリハビリが可能で入院期間の短縮につながっているのもメリットといえるでしょう。

術後のリハビリから退院、その後の生活のポイントなどについて教えてください。

術後1~2日で歩行器を使って
歩行訓練を始めます

基本的に術後1日~2日で歩行器を使って歩行訓練を始めます。人工股関節置換術の合併症の一つに「ロングフライト血栓症(LTE、旧名:エコノミークラス症候群)」がありますが、血栓症や塞栓症を起こさないためにも早期からのリハビリ開始は重要です。一本杖を使って安定した歩行ができる状態で退院となります。仕事復帰のタイミングはご本人にお任せしていますが、事務職であれば数日から1週間ほど体を慣らせば復帰できているようです。中には術後3週間で土木工事に復帰し、「初日だけ少しきつかったですが、その後はまったく問題ありません」という人もいます。ただし、術後どんなに調子が良くても、定期検診は欠かさないようにしましょう。当院では退院後3週間、術後3ヵ月、6ヵ月、1年で状態をチェックし、その後は状態に応じて2年~3年に1度の受診をお願いしています。退院後はゴルフも社交ダンスも日本舞踊も問題ありません。山登りもそんなにすごい山でなければ大丈夫でしょう。

最後に、手術を検討されている方へのメッセージをお願いします。

整形外科は人生を楽しむためのお手伝いをする診療科ですから、手術をするかしないかは、「患者さん自身がどんな生活を送りたいのか」を真剣に考えて判断するのが重要だと考えています。股関節が痛くて動きづらくても、その生活で満足しているのであれば無理に手術を受けることはありません。「もっと活動的な生活をしたいから手術を受けよう」と思うのであれば、ぜひ人工股関節置換術も選択肢の一つとして検討してみてください。人工股関節置換術は長期成績が良好で安定した手術で、日本全国で年間5万件以上も行われており、現在の高齢化社会ではすでに一般的な治療法になっています。医療費には公的医療保険が適用されますし、高額療養費制度の対象にもなっています。不安や痛みが何かしらあるのであれば、一人で心配しているのではなく、まずは股関節の専門医のいる医療機関へ一度相談してみるといいでしょう。


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