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専門医インタビュー

加齢とともに感じる膝の痛み。我慢をせずに専門医へ相談しよう

この記事の専門医

東 裕隆 先生

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1992年北海道大学医学部卒業後、市立札幌病院救急部、北海道大学医学部整形外科医局などを経て、市立札幌病院整形外科副医長に。2007年桑園整形外科を開院。日本整形外科学会認定整形外科専門医。

この記事の目次

患者さんの手術後の様子はいかがですか?
また、手術後のリハビリ、患者さんが気をつけるべきことについて教えてください。

手術後、痛みが軽減され、これまでできなかった活動ができるようになったという患者さんもたくさんいます。しかし、手術をすれば終わりというわけではありませんし、関節は常に使うものなので手術後すぐに痛みがゼロになるわけでもありません。“いい膝”を作るためには、手術後のリハビリが非常に重要になります。
多くの場合、リハビリは手術の翌日から始めます。リハビリ開始まで期間が短いと感じるかもしれませんが、これは人工関節を入れて離した組織同士が元に戻ろうと癒着するのを防ぐためです。手術によって切開した組織を縫合すると、その組織はくっついて自然に治癒します。しかし、治癒の過程で本来は離れている組織同士がくっつくことがあり、一度くっついてしまうと、関節の安定を保つのに重要な筋肉や腱が固まって動きにくくなってしまい(これを「癒着」といいます)、結果的に可動域が狭くなってしまいます。適切な可動域を保つためには、できるだけ早い内からリハビリに取り組まれるのが良いでしょう。

術後2カ月目の膝(屈曲と正座)

手術後しばらくは関節を曲げるたびに痛みが伴うかもしれませんが、理学療法士の指導に従って、リハビリ室はもちろん、自宅でも毎日繰り返し行うことが大切です。個人差はありますが、3〜6カ月リハビリをすると“いい膝”になります。リハビリをしている間、痛みがきつい場合は冷やしたり、パップ剤を貼ったりするなどの処置をします。
人工関節を入れた膝と長く付き合っていくためには、日常生活では膝のための筋肉トレーニングやエクササイズを欠かさないことが大切です。また、体重を増やさないことや、転ばないように注意することなどについても心がける必要があります。新たにスポーツや体を動かすことを始める場合は、主治医への相談を忘れずに行いましょう。


治療費が気になりますが、保険は適用になるのでしょうか?

人工膝関節置換術には公的医療保険が適用されますが、さらに高額療養費制度(年齢や所得に応じて、1カ月間に負担する医療費の上限が定められており、これを超える分が保険から支給される制度)の対象にもなります。保険適用後の自己負担額は数10万円ですが、ここから高額療養費制度を利用し、自己負担額は1カ月あたり、おおよそ約4万円から18万円程度になります。この自己負担額は、年齢や所得に応じて定められており、例えば70 歳以上で所得区分が一般の場合、高額療養費制度により負担は4 万4400 円(1カ月あたり)となります。詳しくは、加入している保険証の団体などへお問い合わせください。

高額医療制度については、こちらをご参照下さい。

最後に、今現在「膝が痛い」と感じている人へひと言お願いします。

もし、普段診てもらっていて信頼できる整形外科医がいるのであれば、その先生と長く付き合っていくのが良いと思います。「痛い」と思ったら、「気のせい」「大丈夫」と我慢せずに必ず信頼できる医師に相談をしましょう。アドバイスをもらいながら、膝のケアを行ってください。
特にかかっている病院はないけれど膝が痛いと感じる、何となく膝に違和感を覚えるという人は、この機会に自分の膝の状態を診てもらっておくことをお勧めします。今はまだ大丈夫、日常生活に支障をきたしていなかったとしても、加齢などによる膝の疾患を予防するためには、痛みや違和感の原因を突き詰めておくことが有用です。また、先生から診断結果を聞くときは、できる限り家族も一緒に話を聞くようお願いします。自分一人だと、どうしても自分に都合の良い診断結果は信じて、都合の悪い結果は無視しがちになってしまいます。今後、仮に治療となったら、家族の理解や協力は不可欠です。客観的な立場で家族に話を聞いてもらい、その内容を治療のサポートへと役立てていくことが、回復への第一歩といえるでしょう。


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