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専門医インタビュー

体重コントロールと筋力強化で膝痛予防 人生をあきらめないで、もっと楽しもう

田代 俊之 先生

東京都

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平成2年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務などを経て、平成29年4月現職に。

この記事の目次

高齢になると、膝が痛いから行動の幅が狭まってきた、あきらめることが多くなったという人が多いのでは?
「残りの人生を、どう生きるか、5年先にどうしたいのか、信頼できる主治医と一緒に考えましょう」と話す田代俊之先生。自分の軟骨を長持ちさせるためにも、正しい知識が必要です。

半月板や靭帯損傷にて、老化現象

多くは変形性膝関節症による痛みだと思いますが、これは、老化現象のひとつ。長年膝を使って動いているうちに、軟骨がすり減り、膝関節に痛みが出ます。歳を取ると誰でも傷んでいきますが、人によって使い方によって、そのスピードに違いがあるのです。しかし、いったん失われた軟骨は、再生、修復されません。
一番望ましいのは、自分の軟骨を一生大事に使っていくこと。しかし、若い頃に靭帯や半月板を損傷したり、肥満があれば、歳と共に膝痛が出るリスクは高くなります。
変形性膝関節症はじっとしている時には痛くありません。常に膝が痛い場合は、他の病気が隠れているかもしれません。
たかが膝の痛みだと簡単に考えないで、まずは膝の専門家に原因を調べてもらうことが大事です。
近くの整形外科で軽度の変形性膝関節症と診断された方で、なかなか痛みが取れないどころか、ますます足を引きずるほど痛くなってきたと当院を受診してきた人がいました。MRIで見ると、骨壊死が分かり、時期を見て人工膝関節置換術を行ったという経験もあります。

一番大切なのは知ること

有訴者率と通院率の比較(人口1,000人に対して)平成16年度 国民生活基礎調査(厚労省)

有訴者率と通院率の比較(人口1,000人に対して)
平成16年度 国民生活基礎調査(厚労省)

日本では変形性膝関節症の患者さんは、700万人、潜在患者を含めると2,000万人以上もいると言われています。一方で、膝が痛くなった人の約5割しか病院に受診していないというデータもあります。膝が痛いから、今までできていたこともできなくなった、年だから仕方がないとあきらめている人たちの、受け皿が必要だと考え、私は毎月、「中高齢者の膝痛教室」を開いています。
膝が悪くなるというのはどういうことか、この先どうなるかなどをわかりやすく説明し、では悪化させないためにどうしたらいいのか、何をしてはいけないのか、膝痛予防の運動の仕方などを実演して、直接高齢者と話をする場です。同時に、行政と組んだ講演会、市民講座も数多く行っています。
サプリメントにしても飲んだほうがいいのか悪いのか、どんな効果があるのかなど、そういうお話もします。
ウォーキングがいいというけれど、「どのくらい歩けばいいのですか」と質問されますが、人それぞれ。答えはひとつではありません。10分歩いて痛くなったら、そこが限度、痛くならない程度に運動を続けていくうちに、30分続けて歩けるようになったという人も多いのです。

膝痛のために、あきらめることが多くなる

変形性膝関節症の重症度(「中高齢者膝痛教室の5年間」より抜粋)

変形性膝関節症の重症度(「中高齢者膝痛教室の5年間」より抜粋)

変形性膝関節症は、長い年月をかけていろんなことができなくなります。
「膝の痛みのために旅行をあきらめたことがありますか」という質問に、重症の人の7~8割が「あきらめたことがある」と答えています。膝が痛いことによって、できていたことができなくなっているのは事実です。
外来で「膝の調子はどうですか」と尋ねると、「変わりません」「大丈夫です」と、ほとんどの人は答えます。でも、よく聞いてみると、「5年前はハイキングにもどんどん行っていたのですがねえ。今では家の周りを動くだけですわ」と。痛くない程度に動いているから調子が悪いとはいえないけれど、行動範囲は狭まっているのですね。
では、この先5年くらいたつとどうなるか、考えたことはありますか? 今できていることができなくなる、今100できていても、50になってしまいます。毎年同窓会を開いているけれど、だんだん参加する人が減ってきた、とみなさん言われます。その原因の多くが変形性膝関節症、膝が痛いから歩けないから参加できなくなったという人が増えてきます。変形性膝関節症は、いろいろなことができなくなっていくということに気付いてもらいたいと思います。


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