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専門医インタビュー

患者さんにあった治療法を選択するために ~痛みを取り除く人工股関節置換術とその方法~

この記事の専門医

赤石 孝一 先生

青森県

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日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本リウマチ学会専門医

この記事の目次

術後の生活や動作で、何か気をつけることはありますか?

脱臼しやすい姿勢

前方アプローチ、前外側アプローチの場合は、筋肉や腱を温存できる可能性が高いため、脱臼率が低く、制限をかける必要がほとんどありません。自由に好きなように歩いていただいて問題ありません。但し、靴下を履く動作では、股関節の強い屈曲と強い内旋とを同時に加えないよう注意が必要です。後方アプローチの場合は、より注意が必要です。
術後、農業や漁業などの重労働に戻るのも禁止していません。スポーツについても軽いものであれば、許可していますが、コンタクトスポーツについては、人工関節の耐久性から控えていただくようお願いしています。なお、術翌日よりどんどん歩行もしていただきますが、中には当然怖いという患者さんもいらっしゃいます。そのような場合、まずはベッド上での軽いリハビリから始めていただくこともあります。

術後の定期検診はやはり必要なのでしょうか?

人工股関節置換術の理想は、患者さんが手術をしたことを忘れ日常生活動作を問題なく送ることだと思いますが、術後の定期検診は忙しくても必ず行ってください。人工関節は人工物ですので「摩耗・緩み・劣化・破損」のリスクは避けられません。最低でも年に1回のペースで、レントゲン撮影を行い、人工関節の状態をチェックする必要があります。
再置換術になっても、摺動面だけ交換するのであれば、傷も小さく、45分程度で手術ができるのに対して、人工関節のカップやステムまで傷んでしまうと、場合によっては数ヶ月の入院で、手術時間も数時間に及ぶこともあります。また、骨融解や摺動面摩耗の状態では、痛みはありませんので、定期検査を怠ると発見が遅れ、後々、非常に大変なことになります。検診結果は画像をデータとして保存しておくため、1年前や2年前との比較も可能です。

青森県には農家の方が多いと思いますが、何か地域的な特徴はありますか?

MIS人工股関節置換術後のX線

農業に従事している方の場合、重いものを持ったり、梯子の昇り降りなど、重労働の上、しゃがんだりねじったりという動作も多く、可動域が大きいのが特徴です。手術も農作業の繁忙期を避けて、夏より冬に集中する傾向があります。
術後は、また農作業への復帰を希望されるため、そのような患者さんに制限なく過ごしていただくためには、筋肉や腱を温存したMISが良いでしょう。傷が小さいだけではなく、筋肉や腱を温存することで、良い意味で可動域が制限されます。可動域が少ないことはいけないことのように聞こえるかもしれませんが、過剰な可動域は、人工関節同士の衝突や破損を生じる危険性が増すため、耐久性の低下が懸念され、脱臼の危険性が増します。また、冬山での登山やスキー中の脱臼および漁師の船上での脱臼は、生命の危険にさらされます。患者さんの職業や趣味も十分に考慮し、説明および治療を行う必要があります。

手術を迷っている方にひと言メッセージをお願いします。

股関節に痛みを感じたら、まずは病院で診察してもらい、痛みの原因をはっきりさせることが大切です。変形性股関節症の診断がついたら、「今後、最も改善したいポイントは何か?」をしっかりと相談します。人により、痛みであったり、脚の長さの差であったり、曲がる角度であったり様々だと思います。年齢や患者さんの背景を十分考慮した上で、痛みを取り除き不自由なく日常生活や仕事をしたいということであれば、人工股関節置換術は治療の選択肢の一つとして有用であると考えます。逆に、痛みはあっても、さほど困っていないという方は、少し様子をみます。人工股関節には耐久性の問題や、特有のリスクはありますが、その点を十分にご理解いただけるのであれば、人工股関節置換術は痛みを取り除くことで、また普通に歩ける元の生活に戻れるため、とても優れた治療法の一つだといえるでしょう。
また、股関節の治療に関しては、様々な治療の選択肢を説明し、患者さんが納得できる説明を丁寧にしてくれる医師のもとで、治療されるのがよろしいかと思います。少しでも気になることがあれば積極的に相談して頂き、自分にあった治療法を選択してください。


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