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専門医インタビュー

~膝の痛みは、原因を確かめて適切な対応を~ 患者さんにとって負担が少ない人工膝関節置換術

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静岡県

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日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会 会員、日本股関節学会 会員、日本膝関節学会 会員、日本リウマチ学会 会員、関東整形外科災害外科学会 会員、中部日本整形外科災害外科学会 会員、東日本整形外科災害外科学会 会員、日本関節病学会 会員 等

この記事の目次

人工関節の寿命について教えてください。

現在の人工関節は、性能も手術のテクニックも良くなっていますから、ほとんどの場合、20年以上の耐久性があると思います。ただ、人工関節そのものは問題がなくても、骨が弱くなって人工関節が緩んでしまうことも考えられますから、術後の定期健診は決して忘れない様に注意をお願いします。
なお、人工関節はあくまでも「人工物」ですので、長い年月の間にはすり減ったり、金属と骨との固定が弱くなったりして、緩みが出てくることがあります。このような場合には入れ替えのための手術を行う必要があります(再置換術)。

関節の一部分だけを人工関節にする方法もあると聞きました。

片側置換術と膝蓋大腿関節置換術後のX線(正面、横)

人工膝関節置換術には、膝関節全体を人工関節に置き換える「全置換術」と、膝関節の傷んでいる片側だけを人工関節に置き換える「片側置換術」があります。その他、膝の中央にあるお皿(膝蓋骨)だけを、専用の小さな人工関節に置き換える方法もあります(膝蓋大腿関節置換術)。このような膝関節の一部分だけを削って、より小さな侵襲で人工関節に置き換える方法は、患者さんの身体への負担も少ないことから、近年症例数が増えています。

膝蓋大腿関節置換術

人工膝関節全置換術は、前十字靱帯を切らないとできませんが、片側置換術は靱帯を温存できるのが大きなメリットです。切り開く侵襲も少ないし、出血量は全置換の約4分の1、手術時間は1時間~1時間半、手術の痛みも半分以下、筋肉をよけて手術するので回復が早く、約2週間の入院ですみます(全置換術は3週間)。手術後の回復も早く、膝の曲がりも良くなります。これまでは、内側の膝関節と膝蓋骨が悪くなると、外側がきれいで靱帯が残っていても全てを人工関節に置き換えることが多かったと思います。ただ、悪いところだけを切り取り、できるだけ前十字靱帯を残しておくためには、内側と膝蓋骨だけを取り換えるといった組み合わせを患者さんごとに考える必要があります。
なお、一口に人工関節置換術といっても、個々の患者さんの状態を診て、患者さんにとって負担が少ない、患者さんにあった手術方法を選択することが重要だと考えています。例えば65歳以上で、膝の痛みのために生活に不便を来しているのであれば、全置換の対象になるまで待っていないで、早めに一部分を置換するほうがいいと思います。年齢と共に他の病気が出てくる可能性もありますし、脚の筋力が落ちてしまい、スムーズに歩く練習などのリハビリが大変になることも考えられます。年齢が高くなると、何といっても気力がなくなりますから、ある程度の年齢でも、一部分だけでも早めに人工関節に置き換えるのが良いでしょう。

「膝蓋大腿関節置換術」について、詳しくはこちらをご参照ください。

手術後に注意をすることは何でしょうか?

リハビリの風景

痛みや発熱さえなければ、手術の翌日から歩くことができます。無理のない、可能な範囲で動きはじめ、少しずつリハビリを重ねて2~3週間程度で退院するのが普通です。人工関節が膝に本当に馴染むには、少し時間がかかるかもしれませんが、3か月から半年もたてば慣れてきて、自分の膝になってきます。日常生活の中でやってはいけない動作というのは特にありませんが、できれば和式のトイレや正座などの生活ではない方がいいと思います。術後に富士山に登った人もいましたが、普通はそこまで無理をしなくてもいいでしょう。
なお、膝を伸ばす筋力をつけるためのリハビリは、術後も大切です。筋力トレーニングを続けることで、膝が安定するだけでなく、曲がりも確保できるため、様々な動作がしやすくなります。痛いからと曲げないでいると関節は固くなり、ますます動かしづらくなります。具体的にどのような内容のリハビリをすればいいかについては、専門家に指導をしてもらいましょう。膝の痛みがとれて海外旅行をする人も多くいます。人生の楽しみを実現できるようになります。

膝の痛みを抱えて悩んでいる患者さんへのメッセージをお願いします

膝の違和感や痛みは我慢しすぎずに、まず近所の整形外科でその原因を確かめてもらいましょう。原因が分かれば、それに応じた治療法はいろいろあります。変形性膝関節症と診断されても、保存的な治療法でしばらく様子を見て定期的にチェックをしていくこともできます。
ただ、1~3か月間同じ治療をしても余り症状が改善しない場合は、膝の専門医のいる大きな病院で一度診てもらうことをお勧めします。変形性膝関節症だといわれて1年半も水を抜くだけの治療をしていた人が、改めて検査をしたところ関節リウマチだったことが分かったというケースもあります。また、膝の痛みを訴えてきたけれど、実は股関節が悪かったという人もいらっしゃいます。痛いところと悪いところが別の場合もあるので、様々な角度から総合的に診てもらわなければいけません。
膝の痛みや歩き辛さは歳だから仕方がないと決めつけないで、専門医に確認してもらうことが大事です。


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