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専門医インタビュー

股関節痛の原因と対処法はさまざま 早期受診で納得のいく治療選択を

この記事の専門医

山崎 琢磨 先生

広島県

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専門領域:整形外科一般、股関節外科
資格等:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医、日本股関節学会認定股関節鏡技術認定取得医

この記事の目次

人工股関節置換術について詳しく教えてください

人工股関節の一例

人工股関節の一例

骨の変形によって、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の骨頭のかみ合わせが悪くなっている場合や、軟骨が摩耗してしまった場合に、金属やポリエチレンなどで構成される人工股関節に入れ替える手術です。メリットは保険が適用されることや、股関節の問題を根本的に改善できることなどがあります。手術の手順としては、骨盤側の変形している部分の骨を削り取って、金属とポリエチレンの受け皿を骨盤側に固定し、大腿骨側の骨頭も切り取り、金属製のステムと呼ばれる人工物を打ち込んでいく流れになります。人工関節自体は1960年代から存在しますが、当初はポリエチレンが摩耗しやすいという問題があり、寿命は10年と言われていたこともありました。
2000年ぐらいから、素材の改良が進み強度が飛躍的に高まったことで、現在では20年~30年程度の耐用年数があると言われています。また、デザインも多様になり、その方の大腿骨の長さや形に適したデザインを選ぶことができます。技術の進歩によって、人工股関節置換術に対する不安も少なくなったことで選ばれる方も増え、80~90代の高齢者の方でも、手術に耐えられる体力や状態をお持ちであれば、手術を受けることができます。

人工股関節にすると脱臼すると聞いたのですが?

前方アプローチと後方アプローチ

股関節を無理に曲げすぎたり、正座をした場合に「脱臼」のリスクがあるとされています。特に後方アプローチでは、筋腱や関節包を切開して人工股関節置換術を行っている場合に懸念されているリスクです。しかし、現在は筋腱を切らず筋間から進入していく「前方アプローチ」を行うことが増えています。「前方アプローチ」では、股関節後方を包む筋腱や関節包がそのまま温存されることにより、股関節の曲げすぎや内に捻る動作を制動することができます。
しかし、患者さんの状態によって「後方アプローチ」での手術を行うべき場合でも、術後に関節包をしっかり縫い合わせることで「脱臼」のリスクが軽減されます。

手術に伴うリスクはありますか?

人工股関節置換術後レントゲン

人工股関節置換術後レントゲン

他の手術同様に人工股関節置換術にもリスクがあります。発生頻度は少ないですが、代表的なものとして「細菌感染」と「血栓」が挙げられます。人工関節の周囲には血流が行きわたりにくい環境になり得るため、万が一細菌に感染した場合に抗生物質も効きにくくなり、感染の状況によっては、もう一度手術する必要が発生する場合があります。
そういった状況にならないために、手術前に手術部位を十分に洗いクリーンな環境の手術室で手術を行います。また、糖尿病の方の場合は、血糖値を安定させて感染しにくくする、炎症のある方はまずは炎症を抑える対処をするなど、その方の状態に合わせて対策がとられています。血栓とは血の塊りができることです。下肢の手術では血栓が比較的起こりやすく、発生比率は2 ~ 3 割と言われています。小さい血栓はしばらくすれば、血管の中で溶けて消えると言われますが、消えなかった血栓が肺の血管などに回って血管が詰まり、肺塞栓症などになる可能性があるとされています。
確率は0.5%以下と低くはありますが、それでも大きなリスクです。この血栓については、予防のためのガイドラインがありますので、それに基づいて、フットポンプで血流を保つよう動かす、弾性ストッキングの活用や、抗凝固薬の投与などが行われています。


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