関節治療の専門医に聞いてみました!

第283回 膝の痛み早目に専門医に相談
適切な治療選択を

ドクター
プロフィール
日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本人工関節学会認定医
エリア 京都府タグ
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渡邉 信佳 先生

膝に痛みがあるせいで、階段の上り下りがおっくうになったり、深くしゃがめなくなったり……。特に中高年女性に多い膝の痛みの原因は、その多くが加齢で膝関節の軟骨がすり減ることによる変形性膝関節症。放っておくと重症化するため、早めに適切な治療を始めることが大切です。医療法人同仁会(社団)京都九条病院整形外科主任部長の渡邉先生に、人工膝関節置換術など変形性膝関節症の治療法やロコモティブシンドロームについて伺いました。

変形性膝関節症の主な原因は何でしょう? 受診するタイミングや日常生活の注意点は?

大腿骨顆部骨壊死

大腿骨顆部骨壊死

加齢、つまり関節の老化にともない膝(ひざ)に痛みが出てくることが多いです。年齢とともにじわじわと痛みが強くなり、O脚がひどくなっていく場合、可能性が高いのは「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」です。これは軟骨(なんこつ)が徐々にすり減ることで起きる疾患(しっかん)で、重症化すると骨まで変形してきます。膝の内側に痛みがあったり、靴の裏がいびつに減るのも変形性膝関節症のシグナルです。また、急に走ろうとしたとき、あるいは階段を上りかけたときなど、瞬間的に力がかかったのをきっかけに突然発症する「大腿骨顆部骨壊死(だいたいこつかぶこつえし)」という疾患もあります。これも高齢者によく見られます。
いずれも放っておくと悪化するので、早めに整形外科を受診してください。運動不足や肥満は変形性膝関節症を進行させる大きな因子なので、早期に診断がつけば、ダイエットや適切な運動といった生活習慣を変えるだけでも症状の改善が見込めます。しかし、骨が大きく変形したり、半月板(はんげつばん)が完全に切れるほど重症化すると治療の選択肢は限られてきます。

「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」という言葉をよく聞くようになりましたが、膝の痛みにも関係がありますか?

あなたの膝は大丈夫ですか?

ロコモティブシンドローム(ロコモ)は「骨、関節、筋肉といった運動器の衰えが原因で移動機能が低下している状態」と定義されています。簡単に言うと足腰が弱って、スムーズに立ったり歩いたりがしにくくなる状態といえます。日本整形外科学会では「片脚立ちで靴下がはけない」「家の中でつまずいたりすべったりする」「階段を上るのに手すりが必要である」「家のやや重い仕事が困難である」「2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である」「15分くらい続けて歩くことができない」「横断歩道を青信号で渡りきれない」の7項目にひとつでも当てはまればロコモの心配があるとしています。そして、膝の疾患はロコモの大きな原因のひとつです。日常生活では、まず体重を落とすこと。それから適度な運動を続けて筋力を落とさないことが大切です。といっても、負荷の高い運動をやりすぎるとかえって悪化してしまいます。近年では「ロコモ外来」を設ける病院も増えているので、足腰に不安があるようなら一度受診をおすすめします。体の状態をきちんと把握できますし、体力に応じた運動メニューや日常生活のポイントを教えてもらえます。動けなくなるほどひどくなってから初めて病院に行く方もいらっしゃいますが、予防的観点から見ても、早めに専門医につながることが重要です。

ロコモティブシンドローム(運動器症候群)はこちらから

変形性膝関節症の治療法にはどのようなものがありますか? 膝の水を抜くとクセになるのでしょうか?

水抜きは「クセになる」ことはありません。

水抜きは「クセになる」ことは
ありません。

大きくわけると保存療法と手術療法があり、初期は保存療法から行うことになります。具体的には潤滑性を高めたり炎症を抑えたりするヒアルロン酸を関節内に打ったり、運動や筋力トレーニングに取り組んだりといったものです。O脚の方は、靴の中敷きの外側を厚めにして膝の内側にかかっている負担を外側に逃すことで楽になる場合もあります。筋力がまだ衰えていない40~50代なら、保存療法だけでも症状が改善することもあります。
膝に水がたまって腫れている場合は、痛みや動きにくさを軽減するために水を抜くこともあります。「水を抜くとクセになる」という方もいますが、水を抜く処置そのものは対症療法であり、大切なのは根本的な原因である関節炎(かんせつえん)を抑えることです。薬剤とリハビリを組み合わせて状態を良くすれば「クセになる」ことはありません。
手術療法では「人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)」が代表的ですが、自分の骨に切れ目を入れて角度を変えることでバランスを整える「骨切り術(こつきりじゅつ)」を選択するケースもあります。この手術は、術後3~4週間は松葉杖で過ごさないといけないので、高齢の方では向かないケースもあり、40~60代ぐらいの比較的若い人に行う場合が多いです。


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