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専門医インタビュー

人工股関節の手術は進化しています 信頼できる専門医のもと ご自分に合った治療選択を

この記事の専門医

荒 文博 先生
  • 荒 文博 先生
  • 医療法人 三愛会 池田記念病院 整形外科
  • 0248-75-2165

福島県

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専門分野:股関節疾患、外傷一般、人工関節外科
資格:日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本人工関節学会認定医

この記事の目次

保存療法の効果がなければ、絶対に手術が必要ですか?

人工股関節の一例

人工股関節の一例

人工股関節置換術は痛みの緩和を期待でき、日常生活がままならない、外出も控えているという方には有効な選択肢だと思います。しかし、どんな方も絶対に手術すべきとはいえません。変形性股関節症はガンなどと異なり、命を脅かすようなものではないからです。医師が手術を提案することはあっても、最終的に手術を受けるかどうかは患者さんの判断が尊重されます。
しかし、いくら説明を聞いても、やはり手術に漠然とした不安を抱える方が少なくありません。外来の待合室ではよく顔見知りの患者さん同士がお話をされていますが、もしもすでに手術を受けた方が周囲にいらっしゃるなら、その方に話を聞いてみるのも良いと思います。「もっと早く受ければよかった」「術後の痛みもあまり感じなかった」など直接声を聞くことで不安を解消し、手術に前向きになれたという方もしばしばおられます。

手術方法にはいくつかの種類があるのでしょうか?

高齢になり腰が曲がってくる
前側方アプローチと後方アプローチ

人工股関節の手術はいろいろなやり方があり、患者さんの状態や手術をする医師によって適切な方法が選択されます。筋肉を切らない低侵襲な手術として、最近増えてきているのが前側方アプローチです。仰向けに寝て太ももの前外側を切開し、筋肉と筋肉の間から股関節に達する方法で、脱臼リスクを大幅に下げられます。日常動作では脱臼は後ろ方向に発生しやすいのに対し、前側方アプローチなら後ろの筋肉を切らないので、後方脱臼しにくい股関節になります。「職場に和室トイレしかない」など、普段の暮らしでしゃがむ動作が必要な方にも対応できる術式となっています。
ただし、変形が強く可動域も狭くなっている方では、前側方アプローチでの手術は難しく、後方アプローチが効果的です。後方アプローチは昔から長く続けられてきた、安定した手術方法です。近年では、後方アプローチでも短外旋筋群(たんがいせんきんぐん)をできるだけ傷つけず、脱臼を抑える方法が開発されて、脱臼率が減少しています。また、高齢になり腰が曲がってくると、骨盤が後ろに反って前方に脱臼しやすくなることがあり、そういう方にも後方アプローチが適しています。

手術による感染症を避けるために気をつけることはありますか?

感染症は、人工関節の手術だけでなく、どの手術にも付きまとうリスクです。発生確率は1% 以下とされ、めったに起きることではありませんが、ゼロにはできない以上、そのリスクを予防する必要があります。感染症リスクを避けるために気をつけていただきたいのは、術前術後にしっかり栄養や水分を取り、体調を整えて、ご自身の免疫力を高めておくことです。術後は特に、トイレに行く回数を減らしたいからと水分を控える方がおられますが、水分摂取や尿量が少なくなると尿路感染のリスクが高まってしまいます。また、虫歯や水虫があるならきちんと治療を済ませてから手術に臨み、術後もそうした症状があればなるべく早く医療機関を受診してください。細菌が体に侵入し人工関節に感染することがないよう、こうした小さな心がけは、手術から年月が経ってもずっと行ってほしいと思います。

手術の後の痛みは強いのでしょうか?

痛みが強いとスムーズなリハビリの妨げになりますので、疼痛コントロールは徹底して行います。まず手術の前には硬膜外麻酔のためのチューブを挿入し、または、神経ブロックを施行し、それに平行して、術中には傷を閉じる前に複数の薬剤を混ぜた注射を股関節周辺の組織に打ち、術後の痛みを抑えていきます。さらに、手術後に病棟に戻ってからは、様々な痛み止めを数時間おきに複数回、点滴で投与します。時間が経って水分が取れるようになると内服薬も活用します。術後の痛みを心配する方もおられますが、こうした対策により、リハビリが行えないような強い痛みを訴える方は非常に少ないのです。


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