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専門医インタビュー

股関節の痛みは生活の質を大きく落とします 原因と治療法を知って改善を目指しませんか?

この記事の専門医

時吉 聡介 先生

山梨県

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平成10年熊本大学医学部卒業
認定資格:医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本人工関節学会認定医

この記事の目次

変形性股関節症と診断されたら、どのような治療を行いますか?

薬

保存療法(手術以外の方法)には、痛み止めの服用、リハビリによる筋力トレーニング、関節内注射などがあります。しかし、これらの方法はあくまで痛みを和らげることで股関節を動かせるようにするための対処療法であり、股関節の根本的な解決にはなっていないと考えます。痛みを感じなくなっても関節自体は変形したままですので、その状態で動かし続けることによって、より股関節の変形が進んでしまう可能性があるからです。
関節が変形して軟骨がすり減ってしまっている状態は、残念ながら元には戻りません。痛みの原因を改善するには、手術などの外科的治療が選択肢となります。
もちろん、手術をするか決めるのは患者さんご本人ですが、痛みで長年悩んでいる、日常生活に支障を来たしている方は、一度専門医に相談されるとよいでしょう。まずは保存療法を続けてみて、その後に手術を検討するというのも選択肢の一つです。

股関節の手術にはどのような種類がありますか?

人工股関節置換術

人工股関節置換術

骨切り術

骨切り術

一般的には「関節鏡視下手術」「骨切り術」「人工股関節置換術」の大きく3つが実施されています。関節鏡視下手術は、股関節唇損傷やFAIの場合に行うことが多いです。骨切り術は、寛骨臼形成不全で症状があるものの変形はそこまで進んでいない、軟骨もまだ残っていて関節のすき間も保たれている方に実施されています。股関節の周りを切り抜いて移動させることで大腿骨頭を十分に覆えるように関節の形を調整する手術です。一部に集中していた負荷が緩和され、痛みの軽減へとつながります。
人工股関節置換術は、変形性股関節症の患者さんに多く実施されている手術です。痛みの原因となる部分を金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換えます。痛みの軽減、関節の曲げ伸ばしを期待することができます。

人工股関節置換術を行う上で大切にしていることは何ですか?

前側方アプローチ

人工関節の周りにある筋肉や関節包(かんせつほう)といった組織をできるだけ温存することだと考えています。股関節を動かすには骨だけでなく、周りにある組織がとても重要です。たくさんの組織がはたらくことで安定して歩いたり曲げ伸ばしをしたりすることができます。人工関節を設置するには、それらの組織を通らないといけないのですが、従来の方法だと組織を切開することで股関節が不安定になり、手術後、回復の遅れや人工関節が外れてしまう脱臼リスクが懸念されていました。股関節の前側方(ぜんそくほう)から人工関節を設置する前側方アプローチは、仰向けの状態で手術を行います。筋肉と筋肉の間から入るため、従来の方法と比べて組織を多く残すことができます。また関節包についても、切ったところはなるべく縫ってから手術を終えることで、手術後早期の回復と、脱臼リスクの軽減を期待することができます。

手術を行う上で気を付けていることは何ですか?

手術に対し合併症のリスクがありますので、十分に対策を行います。代表的なものに、感染症、血栓症(けっせんしょう)、手術中の骨折などがあります。感染症は、手術をしている部分から細菌が入ってしまうことで生じます。そのため、手術をする部屋はクリーンルームといって清潔な空間で行い、医師も特別な手術着や手袋を装着して手術にあたります。血栓症は、手術によって血の巡りが滞り血管内に血栓(血の塊)ができることがあります。対策として、手術後は、早い段階で離床しリハビリを開始することに加え、必要に応じて抗凝固剤などの投与を行います。
手術中の骨折では、組織を温存する手術方法の場合に医師側の視野が狭くなり、限られたスペースの中で股関節を無理に動かしてしまうことで骨が割れてしまう可能性があります。そうならないよう、手術中は、組織を温存しながらも必要十分なスペースを確保し、慎重に手術を進めていきます。対策は施設によって異なりますが、患者さん一人ひとりの状態に合わせて手術を進められるような環境が整っています。


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