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専門医インタビュー

ひざの痛み 受診と治療のタイミングを逃さず適切な治療選択を

この記事の専門医

平出 周 先生
  • 平出 周 先生
  • 牧田総合病院 副院長
  • 03-6428-7500

東京都

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東京慈恵会医科大学医学部卒業
認定資格:日本整形外科学会専門医、日本手外科学会認定手外科専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本手外科学会、東日本手外科研究会

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この記事の目次

変形性膝関節症の治療にはどのようなものがありますか?

変形性膝関節症の進行度は大きく4つに分けられ、症状によって治療法が異なります。早期から中期(KL分類1~2)であれば、薬物療法やヒアルロン酸注射、運動療法で症状が軽快することが多いです。運動療法では太ももの前側にある大腿四頭筋の訓練を行います。ほかにも散歩や水中歩行の筋力トレーニングも有効ですが、運動療法は続かないことも多く、サプリメントなどに頼ってしまう方も少なくありません。なかには成分の相互作用による影響や肝機能への影響もあるので、まずは正確な治療を行うためにも骨や関節の状態を確かめ、痛みの原因を知ることが先決です。ほかにも保存療法として装具療法があります。サポーターや靴の中に中敷きを入れる足底板で内側にかかる荷重を分散する方法です。しかし、かばうことによって筋力の低下が起こることがあるので、筋力トレーニングも行ったほうが良いでしょう。さらに進行度が中期から末期(KL分類3~4)になり、痛みが取れない場合には手術が必要になることがあります。
おもな手術方法には半月板や傷ついた軟骨を切除する関節鏡視下術や、すねの骨を切って内側にかかっている部分を矯正させる骨切り術、痛みの原因となる部分を取り除き人工関節に置き換える人工膝関節置換術があります。

KL分類
KL分類

手術のタイミングについて教えてください

関節内注射

関節内注射

基本的には保存治療を行いますが、痛みがとれず効果が見られない場合は、手術治療という選択肢があることをお伝えしています。痛みの感じ方は個人差があるので、同じ画像所見でも同じ痛みとは限りません。筋力トレーニングや関節内注射によって痛みが治まってくる方もいますので、患者さんの希望に沿った治療を心がけています。しかし、何らかの病気を発症し寝たきりになったとき、手術に踏み切れなかったことに後悔する患者さんがいるかもしれません。厚生労働省の調査によると、関節疾患は寝たきりの原因のなかで約7%といわれています。さらに介護保険の要支援になる原因としては1位が関節疾患となっています。よく歳だからと諦めてしまう方がいますが、今は保存治療から手術治療まで色々な治療法がありますから、まずはどのような治療法があるのか知って、きちんと治療と向き合うことが大切だと思います。

人工膝関節置換術について教えてください

部分置換術と全置換術

部分置換術と全置換術

人工膝関節置換術は、傷んだ関節の部分を取り除き、関節の代わりとなる金属やセラミック、ポリエチレンで構成された人工関節に置き換える手術です。最近の人工関節は加工や製造方法が進化しているので、以前と比べて耐久性が上がっています。主に60歳代以降の方が手術を検討されています。人工膝関節置換術には関節の一部だけを置き換える「部分置換術」と傷んでいる関節すべて置き換える「全置換術」があります。変形が片側(主に内側)に限定されている、O脚の状態がそれほどひどくない、可動域がある程度保たれている、靭帯の状態が良い場合は部分置換術が選択されます。一方で、関節全体が傷んでいて、曲げ伸ばしできる範囲が制限されている、O脚が進んでいる場合は全置換術が適応となります。

人工膝関節置換術の合併症などについて教えてください

人工膝関節の一例

人工膝関節の一例

人工膝関節置換術の合併症でとくに注意したいのは感染です。手術はクリーンルームという清潔な部屋で行うことで予防に努めています。もう一つ代表的な合併症に深部静脈血栓症があります。ふくらはぎの静脈に血の塊(血栓)ができて血管を詰まらせてしまう重篤な病気です。手術前からエコー(超音波)で血栓ができていないか検査をします。たとえ血栓があったとしても手術ができなくなるわけではありません。予防として手術後に血液がサラサラになる薬を使いますが、特に効果的なのは早期離床でリハビリを行うことです。それを妨げないためにも、痛み止めや様々な麻酔を使いながら術後の痛みをコントロールしています。また、金属アレルギーがある方は、手術前に皮膚科でパッチテストの検査を行います。人工関節で使用される金属はニッケルやコバルトクロム、チタンが主流ですが、チタンに窒化処理を行い金属アレルギーの患者さんにも使用できる人工関節も登場しており、金属アレルギーがある方でも手術を検討しやすい環境が整いつつあると感じています。


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