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専門医インタビュー

自分の脚で歩くために股関節に痛みや違和感があれば早めに専門医に相談ください

この記事の専門医

伊藤 芳毅 先生
  • 伊藤 芳毅(いとう よしき) 先生
  • 中部国際医療センター 副病院長、整形外科統括部長、関節再建センター長
    岐阜大学医学部 客員臨床系医学教授
  • 0574-66-1100

岐阜県

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医学博士、日本整形外科学会 専門医、日本整形外科学会 認定スポーツ医・認定リウマチ医、日本リウマチ学会 専門医、日本人工関節学会 認定医

この記事の目次

関節温存手術とは、どのような手術なのでしょうか?

寛骨臼回転骨切り術

寛骨臼回転骨切り術

変形性股関節症の手術には、年齢や病期を考慮して、関節を温存する手術(骨切り術)と人工関節手術があります。若い方で変形が比較的軽度であれば、骨切り術が良い適応だと考えます。その場合、ご本人に病状と自然経過をお伝えし、手術を受けることを希望されれば、変形が進行する前に手術を受けたほうが良いと思います。
寛骨臼形成不全でまだ変形の軽い場合は、寛骨臼を骨切りと外側に移動させ、骨頭の被りを良くする手術(寛骨臼回転骨切り術)を行います。特に最近では、以前に比べると皮膚切開が小さく、前方から侵入し中殿筋などの筋肉に侵襲を加えない手術が行われています。手術によって痛みを軽減させるだけでなく、将来、人工関節の手術を受けずにすんだり、できるだけ人工関節手術までのタイミングを遅らせたりすることが期待されています。もしも将来、人工関節の手術が必要になったとしても、それまでの期間は、ある程度のスポーツ、育児やお子さんと一緒に制限なく行動できやすいです。

人工股関節の手術は、一度に両股関節の手術が可能なのでしょうか?

人工股関節の一例

人工股関節の一例

人工関節の手術は、損傷した寛骨臼の骨を丸く削りカップと言われるものを設置し、大腿骨側は骨頭を切除した後に、大腿骨の骨髄腔を掘削しステムと呼ばれるものを挿入します。ステムとカップの間には超高分子ポリエチレンを挿入し、スムーズな動きを取り戻します。手術後に趣味や仕事などを継続されている方や、脚の長さや動きが改善することで生活や性格が変わる方もおられるます。
手術を受ける方の中には、両側の股関節が同じように悪化している場合があります。全身状態が良好であれば、両側同時に手術を行うことがあります。若い方で、できるだけ早く治し、会社に復帰したいという場合に希望される場合もありますが、ご高齢になってくると、全身状態を考え、片方ずつの手術を希望されることもあります。両側を同時に手術しても片側ずつ行うよりもリハビリ期間が短く、かなり早い機能回復が得られます。

人工関節を正確に設置する技術は進歩しているのでしょうか?

ポータブルナビゲーション

ポータブルナビゲーション

前外側アプローチ

手術前に患者さんそれぞれのCT撮影を行い、それをもとに三次元画像を作成し、手術の計画を立てます。人工関節を設置する位置やサイズが分かるだけでなく、手術によってどのくらいの可動域を獲得できるかも分かり、より正確な計画を立てることができます。また、手術中は、術前計画を再現できるようにポータブルナビゲーションを使用し、より正確な位置に設置することが可能となっています。
手術中は患者さんに仰向けに寝ていただき、前外側アプローチ(ALS)と呼ばれる方法で行うと、中殿筋やその他の筋肉や腱を切離せず股関節に侵入できます。また、関節包の靭帯もできるだけ温存すると安定性が高まり、術後に高い活動性が期待できます。従来の後方アプローチと比べると侵襲が少ないので、短期的には機能回復が早く入院期間も短くすみ、2~3ケ月もすれば特に制限なく生活することが可能です。

高齢の方でも手術を受けることはできるのでしょうか?

高齢の方でも全身状態に問題が無ければ、手術は可能です。また、高齢の方には骨粗しょう症の方が多くいらっしゃいますが、骨粗しょう症の方でも、人工関節の手術を行うことは可能です。ただし、骨が弱い状態で骨折などを起こすと、治療がかなり大変になることがあるので、将来にわたって骨質を維持することが重要になります。骨粗しょう症の状態から骨を強くすることは大変難しいので、予防することが重要です。今後は、単に人工関節の手術によって痛みを軽減させ機能を改善させるということだけではなく、色々な治療に組み合わせて、骨を含めて健康維持をするということが大切だと考えます。


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