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専門医インタビュー

手術は怖がらずに、まずは医師と相談を!人生の幅を広げるためのMIS人工膝関節置換術

この記事の専門医

  • 松本 忠重 先生
  • 本田病院 院長 整形外科専門医
  • 03-3718-9731

東京都

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聖マリアンナ医科大学卒業後、昭和大学医学部整形外科入局。菊名記念病院勤務を経て、2008年、本田病院の新院長に就任

この記事の目次

人工膝関節置換術について教えてください。

人工膝関節置換術後のX線(正面と側面)

患者さんに人工膝関節置換術を説明する際、歯の治療に例えて説明しています。虫歯がひどく進行している場合、傷んでいる歯の表面を削って人工の歯を被せるのが一般的な治療でしょう。同様に、傷ついている膝関節の上下の骨を削って金属でできている人工の関節をかぶせ、間に軟骨に代わるポリエチレンのプレートを挟んで直接骨と骨が当たらないようにするのが、人工膝関節置換術です。手術の流れとしては、まず全身の健康状況の検査し、心電図や血液検査をして問題がなければ手術日を決めます。術中はほとんど出血がありませんが術後に貧血になる可能性もあるため、1週間~2週間前から外来で自己血を400cc程度採血しておきます。手術は全身麻酔で行います。人工膝関節置換術の手術方法には、大きく二通りの方法、スタンダードな手術方法と当院でも力を入れている「MIS(エム・アイ・エス)」という方法があります。

従来法(青)とMIS法(赤)

MISとは、特別な器械を使って皮膚や筋肉をできるだけ切らずに周囲の組織を愛護的に扱う手術方法です。筋肉を一度切ってしまうと、筋力が落ちて関節を動かす力が衰え、回復するまでに時間がかかってしまいます。筋肉や組織を傷つけないで手術を行うことで術後の回復速度はかなり違ってきますし、痛みの度合いも変化します。MISの場合、より丁寧に施術する必要があるため手術時間は1時間30分程度必要になりますが、入院期間は2~3週間、また傷口は10cm程度で済みます。なお、患者さんの中には両膝とも状態が悪い人が多くいます。普通は、痛い方を先に手術して落ち着いてからもう片側を手術しますが、極端に変形が強い場合には全身状態さえよければ両膝を同時に手術することもあります。片側のみの場合より時間は倍近く必要で侵襲も大きくなりますが、手術・麻酔・入院が1回で済むため、患者さんの負担が少ないのが特徴です。リハビリ期間も片側より1週間長い程度で済むというメリットがあります。

人工膝関節置換術は誰でも受けることができるのでしょうか?

手術室の風景

全身麻酔に耐えられないほどの糖尿病や心臓病がある人には難しいかもしれませんが、大抵の基礎疾患は内科的にコントロールができていれば手術に差し障りはありません。手術は事前に全身の健康状態や呼吸機能などを調べてから行いますので、あまり心配する必要はないでしょう。それよりも、本人にリハビリテーションを行う意欲があるかどうかが重要です。人工膝関節置換術も含めて整形外科の手術は、手術が成功すればそれで終わりということはありません。手術は治療のスタートです。どんなにいい手術をしても、その後のリハビリテーションをしっかり行わないと良い結果は出ないでしょう。「痛みは取れたけれど動きが悪くなった」のでは満足感が生まれませんから、リハビリテーションを行う意欲があるか、またリハビリテーションを継続するのに十分な体力があるかがポイントです。関節を新しいものに変えたら終わりではなく、新しい関節を使いこなせるようにならなくては手術をした意味はないのです。

手術には合併症のリスクがあると聞きました。

血栓症は、フットポンプで定期的に血流を戻して予防します

術後の合併症で特に気をつけなくてはいけないのが「血栓症・塞栓症」です。人工膝関節置換術は骨の断面から出血をするのが特徴ですが、出血があると人間の体は血を止めるため、血を固まりやすくします。術後に長時間、脚を動かさないでいると、下肢の静脈が鬱滞して血の塊(血栓)ができて血流が悪くなります。この血栓が剥がれ、脳や肺に流れていって詰まってしまうと脳梗塞や肺血栓の原因となります。血栓症や塞栓症が起きた場合の症状としては、太もも・ふくらはぎ・膝裏・足首の腫れや痛みなどがあげられます。血栓症を予防するためには、血流が滞らないように注意する必要があるため、手術直後からベッド上で定期的に血流を戻すフットポンプという機械を使って予防します。動けるようになれば弾性ストッキングを使ったり、2日~3日後からは出血状況を確認したりしながら静脈注射や止血剤などを投与して、血栓症の確率を少しでも減らすために対策を行います。


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