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専門医インタビュー

手術は怖がらずに、まずは医師と相談を!人生の幅を広げるためのMIS人工膝関節置換術

この記事の専門医

  • 松本 忠重 先生
  • 本田病院 院長 整形外科専門医
  • 03-3718-9731

東京都

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聖マリアンナ医科大学卒業後、昭和大学医学部整形外科入局。菊名記念病院勤務を経て、2008年、本田病院の新院長に就任

この記事の目次

人工膝関節置換術を受けるにあたって年齢制限はありますか?

以前は、人工膝関節置換術の手術年齢は65歳以上~80歳以下とされていましたが、手術手技や人工関節が進歩し侵襲も随分少なくなったことから、80代の患者さんも多くなりました。活動性の高い高齢者も増えていますので、もはや一概に年齢では切ることができないでしょう。実際に80代でも意欲がある人は、手術後のリハビリを頑張り日常生活を活発に送っています。意欲と体力さえあれば手術年齢に上限はないと考えています。また、人工関節の性能や耐久性が昔よりも上がっていることから、50代~60代の患者さんも増えています。人工膝関節の耐久性は15年~20年といわれていますので、活動レベルの高い若い年齢だと将来的にもう一度人工関節を入れ直す「再置換術」が必要になるかもしれません。しかし、60代でも膝が悪く日常生活に大きな支障が出ており、レントゲン上でも手術をした方がよいと判断される人には、手術をして早く普通の生活に復帰させてあげたいと考えています。再置換術で使用する器械や環境も整ってきており、手術成績も以前と比べはるかに良くなりました。退院後、定期的に診断を受けていれば不具合が生じた場合でも早めの対処が可能です。若い世代だからこそ、早期に社会に戻し残りの長い人生をあきらめて欲しくないと思っています。

術後のリハビリテーションについて教えてください。

リハビリ室の風景

手術当日は安静にしていただき、リハビリは手術の翌日からCPMという機械を使った膝を動かす訓練や、ベッドの上で起きる練習などをスタートします。元気な人は翌日から立つこともできます。その後は患者さんの気力次第で内容が異なりますが、平均的には術後2週間も経てば一本杖を使って歩くことができるでしょう。多くの患者さんはそこで退院しますが、中にはまだ筋力が戻らない人もいます。リハビリのプログラムは同じですが、もともと持っている筋力や実際に取り組んだ度合によって、回復スピードは大きく異なります。筋肉は歳をとっても使っている限り衰えることはありませんので、退院後も通院でリハビリを続けてもらいます。日常動作が難なくできる筋肉をつけて手術前の日常習慣・生活に戻すためには、家に帰ってからのリハビリが不可欠です。家庭環境や本人が今後何をしたいのかによってメニューは異なるため、理学療法士と相談しながら指導を続けていきます。

平行棒を使用した歩行訓練の様子

退院後の生活では、特にやってはいけないことはありません。患者さんには「あまり制限を設けずに自分の人生をエンジョイしてください」と伝えています。ただ人工関節を長持ちさせるためにも、転倒やケガに気をつけるとともに膝の正しい使い方を覚えておいただくことをお願いしています。特に、正座や膝を極端に捻る動作は避け、ジョギングなどの膝への衝撃が強いスポーツは行わないようにしましょう。あと、退院後の定期健診は欠かさないようにしてください。「筋力が落ちていないか」、「人工関節が緩んでないか」など、何か起こっても早期に発見できれば大事に至らずに済みます。

最後に、膝関節の痛みに悩んでいる方へメッセージをお願いします。

まずは、膝の痛みを我慢しすぎないでください。痛みのために膝がきちんと伸びない状態になると、歩き方が前かがみになって腰が悪くなり疲労度も上がり、最終的に歩ける距離が短くなってしまいます。手術を検討する目安としては、膝をまっすぐに伸ばせるかどうかが見極めのポイントです。膝の後ろの筋肉が硬くなって痛みが出始めたら、手術を考えた方がいいしょう。仰向けに寝て膝の後ろに拳が入るようであれば、膝が伸びていない証拠です。痛みも強くて動きづらかったら気をつけた方がいいと指導しています。膝の痛みを抱えている人には、体重をかけずに筋肉をつける運動(大腿四頭筋訓練)と膝を伸ばすエクササイズを勧めています。膝を曲げるのではなく膝を伸ばすことで、膝を支えている筋肉をつけることが目的です。膝が伸び筋肉がしっかりついていれば、膝にかかる負担も減り関節変形の進行も遅くなります。場合によっては、手術を受けずに痛みをコントロールできるかもしれません。それでも「そろそろ手術を考えましょう」といわれたら、怖がらずに医師と十分に話し合ってください。手術に対する恐怖感から受けるタイミングを逃さないようにしましょう。適切に人工膝関節置換術を受けることで、きっと人生の幅が広がると思いますよ。


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