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専門医インタビュー

いつまでも元気に歩くために ~股関節の痛みと人工股関節置換術~

この記事の専門医

神奈川県

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昭和50年東京慈恵会医科大学医学部卒
整形外科専門医、日本手外科専門医、日整会認定リウマチ医、日整会認定スポーツ医、日本リハ学会認定臨床医、日体協スポーツドクター

この記事の目次

日本股関節研究振興財団の活動について教えてください。

日本股関節研究振興財団は、(1)股関節の研究を進める、(2)股関節の手術の専門家を育てるという二つの目的のもと、東京慈恵会医科大学整形外科元主任教授の伊丹康人先生によって昭和62年に創設され、様々な事業を行ってきました。その後、法人制度の変更にともない平成23年12月に公益財団法人となっています。財団では創設以来26年の間に、述べ120人の研究者におよそ1億4000万円の助成を行い、多くの研究者を支援してきました。医学研究の目的は、病気の原因や病態を解明したり、より優れた治療法を確立したりすることです。現場の医療従事者は研究の成果を活用しながら診療を行い、また自らも研究を行い発表しています。日々の診療を行いながら研究に取り組むことは容易ではありませんが、より良い医療を目指して多くの医師が頑張っています。財団では、「股関節に関する研究」、「診断と治療技術の開発」、「健康寿命を延伸するための研究」を奨励するために、それらに関連した優秀な研究に対して助成金の支給を行っています。しかし、このような医学研究には多大の費用がかかります。そこで2013年末から、個人でも医学研究を支援できる「Monthly股関節らくらく募金」を開始しました。股関節の疾患で困っている患者さんが自ら、自分たちのために毎月2000円~5000円程度の寄付ができるプログラムです。得られた募金は、股関節治療の研究だけではなくロコモティブシンドローム対策の研究や啓発活動などにも使われ、股関節で悩んでいる人々を救うために活用されます。

公益財団法人 日本股関節研究振興財団について詳細は、こちらをご参照ください

股関節のために有効な「医学体操」を提案されていると聞きました。

手術の効果を最大限に発揮するためには、術後だけでなく術前から患者さんを定期的にフォローして筋力を鍛える必要があります。また、痛みはないが違和感はある段階の患者さんには、症状が進む前にできる限り筋力を付けていただきたいと考えています。そこで財団では、長年にわたって医学体操を研究・実践しているメディカルフィットネス研究所と共同で、骨・関節・筋肉などの運動器に着目した運動器健康寿命延伸体操「ロコモン体操」を開発しました。中でもエクササイズボールを使う「新・ボール体操」は、ボールに座っているだけで全身のバランス感覚、腹筋、肺筋、中臀筋、大殿筋などを体に負担をかけずに鍛えることのできる理想的な体操で、その普及のためにDVDも作成しています。固くなった股関節も、きちんと動かしていると柔らかくなり可動域が広がります。症状が悪化する前からボール体操を継続していれば、痛みの進行は遅くなるでしょうし、手術を受けることになっても術後スムーズに動けるようになります。ただ、一人では正しい方法で体操を行うのは難しいと思いますので、まずは指導をしてもらいましょう。その後DVDを見ながらで自宅で継続してください。月に1回くらい、専門家のアドバイスを受けるのが理想です。財団では、この他にも小ボールやゴムバンドなどを使う体操や床に寝て行う運動なども推奨しています。

広く一般の人を対象にした活動も行っているのでしょうか?

治療効果を最大限に引き出すためには、病気の原因や治療法に対する正しい情報が不可欠です。股関節について正しい知識を広めることは、症状の予防だけではなく、進行を遅らせる効果も期待できます。財団では、広く世間一般に股関節への関心を高めて正しい理解を促進するため、分かりやすくまとめた書籍の発行や定期的な市民公開講座の開催、健康ガイドブックの作成などといった、啓蒙活動を積極的に行っています。特に2012年に発行された書籍『人工股関節がよくわかる本-いつまでも元気に歩くために』は、人工股関節置換術の紹介だけでなく、人工関節の素材や術後の日常生活、術後に自宅でできる体操、実際に手術を受けた人のエピソードなど、人工股関節に関する情報をできる限り盛り込んでいます。多くの股関節の専門家がイラスト入りで丁寧にわかり易く解説していますので、股関節について詳しく知りたい人はぜひ参考にしてください。

最後に、股関節の痛みや違和感に悩んでいる方にアドバイスをお願いします。

加齢的な変化に伴い、骨は誰でも弱くなります。同時に、平衡感覚や敏捷性は低下し、筋力低下と筋肉の委縮、筋や腱の柔軟性も落ちるでしょう。股関節は人体の関節の中でも最大の関節ですから、具合が悪くなると歩行困難だけでなく日常生活に多大な影響が出てきます。股関節の痛みを単純に歳のせいと諦めてはいけません。いつまでも元気で歩くためには、前向きに運動に取り組むことが大切です。関節や筋肉などの運動器は動かさないでいると障害が起こりますが、運動することで体力は改善され機能が向上します。体幹・下肢筋肉を鍛える体操を継続して行うことで、バランス、持久力、瞬発力、筋力などは間違いなくアップします。医療従事者は積極的にサポート、フォローを行いますので、「自分の健康は自分で守り、自分の病気は自分で積極的に治す」という意識をもって、ぜひ前向きに治療に取り組んでください。


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