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専門医インタビュー

変形性膝関節症の治療は段階的に 症状が改善しなければ次の手段を考えよう!

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神奈川県

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産業医科大学卒業。日本整形外科学会専門医・リウマチ認定医、日本リウマチ学会専門医、日本リウマチ財団登録医、日本医師会認定産業医

この記事の目次

術後のリハビリについて教えてください。

リハビリでは、階段昇降や入浴動作など日常生活動作も訓練します

手術後は早い段階から足首などを動かすように指導しています。血栓症を予防するためにも、翌日には上半身を起こし脚の曲げ伸ばし訓練などを行い、2日目からリハビリを開始します。痛みの強さにもよりますが、翌日から一人でトイレに行ける人もいます。その後、膝の曲げ伸ばしの練習や歩行練習を行い、3週間~4週間で退院するのが一般的な流れです。もともと歩くことができていた人は、退院時には自分の脚で歩いて帰れますが、歩けなかった人はもう少しリハビリに時間がかかるかもしれません。場合によっては、退院後もリハビリで通院したり回復期リハビリテーション病院に入院したりする人もいます。家の中で家事をこなすのもリハビリの一つですので、半年ほどは筋力トレーニングを意識して家事を行うように勧めています。入院中に指導されたプログラムは、退院後も自宅で継続して行ってください。手術後のリハビリをしっかり行うことで、痛みのために制限されていた動きや十分な膝の曲がりを必ず取り戻すことができます。退院後3週間~4週間経ったら、検査のために受診してもらいます。レントゲンで人工関節がきちんと収まっているかを確認し、立ち姿や歩く様子などを観察します。まだ腫れや違和感、多少の痛みも残っているかもしれませんが、3カ月~半年も経てば違和感は少なくなるでしょう。

退院後の生活で注意すべきことがあれば教えてください。

退院後の定期検診は忘れずに必ず受けてください

退院後はごく普通の生活であれば何でもできますが、人工関節の緩みや破損の原因になるため、飛んだり跳ねたりといった膝に強い衝撃や負荷がかかる動作や運動は避けてください。従って、普通に速足で歩くくらいは問題ありませんが、ジョギングといった衝撃が加わる運動などは勧められません。「エアロビクスを習いたいのですが」と患者さんから聞かれることがありますが、「水中でのエアロビクス(アクアビクス)にしてください」と答えています。今までやってきたゴルフは禁止していませんが、無理に腰から膝を捻るフォームはよくありません。後は転んで骨折をしないように気をつけてください。また、退院後は定期検診を受けるのを忘れないようお願いします。術後最初の1年間は2カ月~3カ月に1度のペースで、その後は1年に1回来院してもらいます。定期的に検査することで、もし何か起こっても早期に対処することができます。定期検診では、脚の筋力をチェックした上でレントゲンを撮り、膝の様子を診察します。なお、術後何年も経ってから、体内の細菌が血液で運ばれ人工関節に付着して遅発性の感染症を起こすことがあります。「風邪をひいた」、「下痢をした」など体調が悪い時はそのまま放置せず、早めに医療機関にかかって、しっかりと治療するようにしましょう。くれぐれも全身の健康状態には気をつけてください。

最後に、膝の痛みに悩む人へメッセージをお願いします。

膝の痛みはあまり我慢をせず、早めに膝の専門医に相談して痛みの原因を調べてもらうことを勧めます。重篤な疾患でないことを確認したら、どういう治療を選択するかは本人次第です。できる限り保存療法で頑張るのも一つの選択肢だと思いますが、漫然と効果のない治療法を続けていても仕方がありません。具体的な目安としては、保存療法で3カ月間経過観察をしても症状に変化がなかったら、人工膝関節置換術など次の手段を考える必要があるでしょう。治療は段階的に考えなくてはいけません。変形を改善して痛みを取り除き生活の活動レベル上げるためには、人工膝関節置換術は非常に有効な治療法です。実際に人工膝関節置換術を受けた多くの患者さんからは、諦めていた家族旅行や娘との海外旅行、友達と遊びに行けたなどと喜びの声が数多く届いています。手術に恐怖感を持つ気持ちはよく分かりますが、いろいろな治療を続けていても痛みが改善しない場合には、怖がらずに説明を聞いてみてはいかがでしょうか?痛いから歩かない・動かないでいることは、決して身体にいい影響は与えません。変形性膝関節症は高齢になれば誰でも罹る可能性のある病気です。「膝の痛みやO脚は歳のせいだから」とすぐに諦めるのではなく、適切な治療法に適切なタイミングで取り組むことで、できる限り自分一人で動ける状態を維持することが重要だと考えています。


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