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専門医インタビュー

手術支援ロボット等による、より正確で低侵襲な手術 変形性膝関節症の治療は、格段に進歩しています

椎木 栄一 先生

山口県

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資格:日本整形外科学会整形外科専門医、日本リウマチ財団登録医

この記事の目次

変形性膝関節症の患者数が多い中で、整形外科での治療法も進歩し続けています。いまや日本国内で年間約10万件も行われているという人工膝関節置換術についても、手術を支援するさまざまな機器が登場し、患者さんが得られるメリットがより増えています。山口県立総合医療センターの椎木栄一先生に、手術を受ける適切なタイミングや進歩している人工膝関節置換術について教えていただきました。

中高年世代に多い変形性膝関節症の主な原因は何ですか?

正常な膝と変形性膝関節症(進行期)

中高年世代が膝痛を引き起こす疾患としてもっとも多いのは、変形性膝関節症です。簡単に言うと、膝の関節軟骨がすり減ることによって炎症が起きるために痛みを感じます。発症の原因はいくつかありますが、その一つが加齢です。歳をとって脚の筋力が衰えることに加えて代謝が落ちて体重が増えていくと、膝関節に負荷がかかり軟骨の摩耗につながります。また、日本人にはもともとO脚の方が多く、膝の内側の軟骨が摩耗しやすいということも考えられます。その他に、若い頃にスポーツやケガによって膝関節を支える靭帯や半月板を傷めたことで、膝が不安定になり軟骨が摩耗しやすくなることもあります。

どのような症状が出たら整形外科を受診したほうがいいのでしょうか?

正常な膝(左)と炎症の起きた膝(右)

正常な膝(左)と炎症の起きた膝(右)

痛みが3日以上続いていたり、あるいは歩いている時に膝がグラグラしたり膝が赤く腫れていたりする場合は、整形外科を受診することはとても大切なことです。なぜなら、そのような自覚症状がある時、膝関節の中では明らかに異常が起きている可能性が高いからです。例えば膝が腫れる場合には、関節内の滑膜という組織に炎症が起こり水が溜まっていたり、骨折や靭帯などの組織が損傷して出血を起こし血液が溜まっていることがあります。整形外科を受診するメリットは、このような症状の原因について、的確な診断が受けられることです。原因がはっきりしない段階で、ご自身の判断でやみくもに対処してしまうと、場合によっては症状を悪化させてしまうおそれがあります。
整形外科でしっかり原因を特定してから治療を進めることが大切です。

変形性膝関節症と診断されると、どのような治療が行われますか?

水中ウォーキング

水中ウォーキング

変形性膝関節症と診断された場合、一般的には保存療法から始まります。初期の炎症による痛みに対しては、消炎鎮痛剤の服用や湿布による薬物療法などが行われます。ただし、痛みがあるからといって半年、一年と漫然と鎮痛薬を服用し続けるのは副作用のおそれがあるので、薬の種類も含めて主治医と相談することをお勧めします。
痛みがある場合は運動療法の効果がかなり期待できます。多くの方は膝に痛みがあるとあまり歩かなくなりますが、筋力が低下してしまうと膝が不安定になり痛みが増悪するという悪循環に陥ってしまいがちです。そこで膝の機能に大きく関わる大腿四頭筋という太もも前側の筋肉を中心とした筋力トレーニングが、保存療法の一貫として重要視されています。ご自分で行う場合は、自転車漕ぎや水中ウォーキングなどが膝に負担がかかりにくく必要な筋肉を鍛えられます。ただし短期集中では意味がないので、ご自分のやりやすいことを選んで毎日コツコツと続けていくことが大切です。

どのような状態になったら手術を受けたほうがいいのでしょうか?

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射

痛みの改善を目的にヒアルロン酸注射が行われることがあります。しかし、ヒアルロン酸注射を受けても効果が3~4日しか持たず、痛みで生活に支障が出ているようなら保存療法では限界が来ていると考えられるので手術を検討することも必要だと思います。
車椅子を使わないといけないほど歩けなくなってしまってからでも手術を受けることはできます。しかし、歩けるようになるまでにはリハビリに相当な時間がかかってしまいます。また、ご高齢になるほど合併症の心配も出てくるので、できるだけ筋肉がしっかりあるうちに、遅くとも車椅子を使わないといけないくらい悪化する前に手術を受けられたほうが良いと思います。


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