手術支援ロボット等による、より正確で低侵襲な手術　変形性膝関節症の治療は、格段に進歩しています

人工膝関節置換術にはどのようなメリットが期待できますか？

膝関節の内側だけが傷んでいる場合は、骨切り術が行われることがあります。しかし、人工膝関節置換術は、内側だけでなく外側や膝のお皿の骨が変形していても行えるなど適用範囲が広いというのがメリットの一つだと思います。また、O脚等の変形がかなり強かったりしても適用することもできます。何よりも関節の傷んでいる部分を切除して人工物に置き換えるので、高い除痛効果が期待できます。

手術支援ロボット等を使った人工膝関節置換術について教えてください

日本国内でも人工膝関節置換術に手術支援ロボット等が使われ始めています。ロボット手術と呼ばれることもありますが、ロボットが人間に成り代わって手術を行うわけではありません。手術支援ロボット等による人工膝関節置換術では、術前に整形外科医が作成した計画通りにコンピュータによって制御されたロボットアームが、正確な位置で骨を切ったり削ったり、あるいは医師を誘導して正確な切断を補助します。
ただし、人工膝関節置換術の全てをロボットアームだけに頼るわけではありません。個々の患者さんに合わせて、どんなタイプの人工関節をどういう角度でどう設置するのが理想的なのかは、手術前に整形外科医によってデザインされます。手術支援ロボット等によってそのデザインが正確に再現できるようになったことは、非常に大きな進歩だと思います。

従来の手術用ナビゲーションシステムとの違いは何ですか？

人工膝関節置換術における従来の手術用ナビゲーションシステムは、骨を切ったり削ったりする位置を示してくれる非常に有用なものです。しかし、その場所に骨を切る手術器具などを持っていくのは整形外科医の手によるものなので、どうしても人間の動作による多少の誤差が生じることがあります。その意味では、従来の手術用ナビゲーションシステムを用いた手術よりも正確な人工関節の設置が可能になると期待できます。

患者さんにはどんなメリットが期待できますか？

整形外科医が立てた術前計画通り、正確に人工関節が設置できることです。人工関節が正確に設置できるほど膝の機能の再現性が高まり、人工関節の耐久性向上にもつながると期待できます。加えて、整形外科医の手による従来の手術方法よりも皮膚の切開が小さく、出血量も少なく手術時間も短くなっています。もちろん厳密な比較はできないものの、従来の手術を受けた患者さんよりも手術支援ロボット等を受けた患者さんのほうが、術後の痛みの訴えが少なく術後の経過もいいように感じます。保険適用にもなっていますので、主治医によく相談されるといいでしょう。