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専門医インタビュー

~手術精度の向上と患者さんの負担軽減を目指して~ ナビゲーションとMISを駆使した人工膝関節置換術

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兵庫県

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神戸大学医学部卒、神戸大学大学院医学系研究科修了、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、神戸大学医学部臨床教授

この記事の目次

人工膝関節置換術とは、どのような手術なのでしょうか?

人工膝関節の一例

変形して傷んだ骨の表面を削り取り、金属や特殊ポリエチレンでできた人工の関節と置き換えることで、正常に近い膝関節の動きを取り戻す手術です。人工膝関節置換術には、膝関節全体を置き換える全置換術と、傷んでいる側だけを置き換える片側置換術があります。片側置換術の場合は、人工関節のサイズも小さいために患者さんの身体負担が少なく、膝の可動域制限も少なくて済みます。また、靭帯を残すことができるので、術後の違和感も少ないといわれています。

傷口は10~12cm。筋肉や
腱などを極力切らないこと
がポイントです

最近は手術器械や手技の進歩によって、傷口が小さくて済むMIS(エムアイエス:最小侵襲手術)が広く行われるようになりました。このMISは、部位の切開をなるべく小さくし、患者さんの体にかかる負担を軽くしようという手法ですが、傷口の小ささにこだわり過ぎると、視野の狭さから手術の確実性が低下するので危険です。むしろ、皮膚における傷口の小ささよりも、その奥の筋肉や腱などを極力切らないことがMISのポイントです。筋肉を切らなければ、関節を動かすための筋力を高い状態で維持することができ、患者さんの痛みも少なくて済みます。その結果、手術翌日から本格的なリハビリを開始することができ、入院期間の短縮も可能になっています。 傷口の大きさは概ね10~12cm、以前は退院まで1~3ヵ月くらいかかっていましたが、MISの場合、10日~2週間での退院も十分に可能です。

手術に「ナビゲーションシステム」を導入していらっしゃるそうですね。

ナビゲーションを使用した手術風景

ナビゲーションシステムというのは、コンピュータによる手術支援システムの一つです。車の「カーナビ」と同じように、術前にCTなどの検査で得られた患者さんの骨格情報などを入力しておくと、赤外線カメラで人工関節の設置位置や設置角度、骨を切る量などを計測し、手術器具をどのように動かせばよいかを画面に表示してくれます。人間の目側で手術を行うと、どうしても2~3度の狂いは生じがちですが、ナビゲーションシステムでは0.5度単位で表示されるので、より正確で安全な「術前計画通りの手術」を行うことができます。 手術に必要なのは「神の手」ではなく、誰がやっても良い結果が得られるということが、本当に良い手術だと考えています。ナビゲーションシステムを使用すると人為的なミスがほとんど起こりませんから、経験の浅い医師でも、非常に正確な人工膝関節置換術を行うことが可能です。手術時間も従来はナビゲーションシステムを使うと長くなるといわれていましたが、慣れればあまり変わりません。難しい症例では、むしろ早く済むこともあります。手術時間は全置換術で1時間半~2時間、片側置換術で約1時間です。

手術後の患者さんのエピソードなどを教えてください。

人工関節の耐用年数は、以前は15年~20年といわれていましたが、現在の人工関節は材質や性能が格段に良くなっていますので、今後の耐用年数はもっと長くなるでしょう。そのおかげか、術後から元気に動き回っている人が多い印象ですね。ある80代の患者さんは、カンボジア旅行やインド旅行を楽しんできたとおっしゃっていました。カンボジアのアンコールワットなんて階段が急勾配ですから若い人でも大変だと思うのですが、ちゃんと登れたそうです。また、術後のゴルフでホールインワンを2回出した人もいます。皆さん、自分の脚で歩ける生活を楽しんでいらっしゃるようです。


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