関節治療の専門医に聞いてみました!

第53回 ~手術精度の向上と患者さんの負担軽減を目指して~
ナビゲーションとMISを駆使した人工膝関節置換術

ドクター
プロフィール
神戸大学医学部卒、神戸大学大学院医学系研究科修了、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、神戸大学医学部臨床教授
エリア 兵庫県タグ
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超高齢化社会が進むのに伴い、膝に痛みを抱える人が増えていますが、適切なリハビリテーションを行うだけで、症状が改善するケースもあるといいます。「手術を行う場合でも、術前・術後のリハビリテーションはとても重要です」とアドバイスする神戸海星病院の柴沼均先生に、コンピュータ技術による手術ナビゲーションシステムや、「歳だから」と諦めないことの大切さなどについてお話を聞きました。

膝の痛みの原因となる主な疾患は何ですか?

変形性膝関節症のX線

最近、特に多いのは「変形性膝関節症」ですね。膝関節の骨の表面は、弾力のある柔らかな軟骨で覆われていますが、長年使い続けることですり減り、傷んでしまいます。その結果、その下の硬い骨同士が直接ぶつかり合うようになり、痛みが生じたり、骨が変形してしまったりするのが変形性膝関節症です。女性に多いのが特徴の疾患ですね。日本人の場合、骨の変形が進むと多くの人がO脚になり、膝のバランスが悪くなって徐々に歩くのが困難になっていきます。X脚に変形する傾向が強い欧米人に比べてO脚への変形が非常に多いのが日本人の特徴ですが、これは、畳の上で正座をするなど、和式の生活スタイルに一つの要因があるのではないかといわれています。また、膝の痛みの原因として変形性膝関節症が非常に増加しているのは、やはり、超高齢化社会が大きな要因となっていると考えられるでしょう。

治療はどのようなことから始めるのでしょう。

理学療法士の指導のもと、適切な運動習慣を
身につけることが大切です

まずは、保存療法から始めます。筋力をつけることが非常に重要なので、メインになるのは筋力トレーニングやリハビリなどの運動療法です。また肥満は大敵ですから、過体重の人には、適正な体重コントロールができるように生活習慣の指導を行います。必要に応じて、適宜、内服薬や関節内へのヒアルロン酸注射などを投与することもあります。運動療法では、まずは体幹の筋力を鍛え、正しく歩けるようになることを目指します。「自分なりに運動をしている」という人は結構多いのですが、やはり自己流では効果がありません。むしろマイナスになっている場合もあるため、専門の理学療法士の指導のもと、適切な運動習慣を身につけていくことが大切です。来院される患者さんには、痛みのために日頃から体を動かしていない人が多いため、膝だけでなく、股関節や腰も硬くなってしまっているケースも多く見受けられます。しかし、「手術をしてください」と来院された患者さんでも、適切なリハビリを3ヵ月行なった結果、「良くなりました!」といって帰って行かれる人は決して少なくありません。基本的に、手術は「最終手段」だと考えています。

手術の適応は何を基準に決めるのですか?

ケースバイケースではあるのですが、一つは、夜間痛・安静時痛があるような人ですね。寝ていても痛いという場合などが、これに当たります。もう一つは、歩き方です。変形がひどく膝が機能していないために、どうしても正しく歩けない人も手術の適応になります。ただし、手術をするかしないかは、ご本人が望む活動性のレベルにもよります。「家の中で静かに手芸をするのが一番の楽しみ」という人に、無理に手術を勧めたりはしません。一方で、「痛いので仕方なく諦めているけど、本当は旅行に行きたい、スポーツもしたい」という人にとっては、手術はとても有効な治療法だと思います。ただし、手術をする場合でも、術前のリハビリで筋力をつけておくことがとても重要になります。膝が痛くて、あまり動かしていなかった人は、本来の膝の動かし方を忘れてしまっていることが多くあります。うまく膝を動かせなくなってしまった状態のまま手術を受けると、術後の回復に支障が出ることも考えられますので、まずは「動かし方の練習」=「リハビリ」をしばらく行ってから手術に臨んでもらいます。術前のリハビリの多くは通院で行いますが、膝や脚の動きがあまりにも悪い場合は、術前に入院してもらい、十分にリハビリを受けてもらってから、手術を行う場合もあります。


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