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専門医インタビュー

~手術精度の向上と患者さんの負担軽減を目指して~ ナビゲーションとMISを駆使した人工膝関節置換術

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兵庫県

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神戸大学医学部卒、神戸大学大学院医学系研究科修了、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、神戸大学医学部臨床教授

この記事の目次

術後のリハビリの重要性と退院までの流れを教えてください。

膝の可動域訓練(左)と杖歩行訓練(右)の様子。

術後のリハビリは、膝の機能回復という点で非常に重要であり、「しっかりとリハビリに取り組む意志がなければ、手術はしてはいけない」といっても過言ではありません。リハビリをすることで、膝関節周辺の筋力を強化し、バランスや可動域を回復させていきます。 その際には、理学療法士が患者さんにあった運動を行う手助けをしてくれます。 退院は、トイレや入浴はもちろんのこと、女性の患者さんが多いので、炊事、買い物、掃除といった家事が一通りできるようになるのが目安になります。退院後はリハビリに通う必要がない状態で帰っていただく方がご本人も安心ですし、転倒などの事故も防げます。入院期間は、早い人で1~2週間から、納得のいくまでリハビリをされる人で1ヵ月くらいです。

メニューの内容には個人差がありますが、日常生活への復帰を目的とした内容で、基本的には手術の翌日から開始します。術後の痛みはリハビリの大きな妨げになるので、当院では必要に応じて術中にオピオイドカクテルを使用し、疼痛コントロールを行なっています。痛みが強いと患者さんの多くは怖くて体を動かしませんので、リハビリが遅れて回復に支障を来すこともありますが、疼痛コントロールを行えば、術後すぐのリハビリもスムーズに実施することができます。多くの人が、術後約2週間で杖を使って歩くことができ、約1~3ヶ月で車を運転できるぐらいまで回復します。退院後の定期検診は、基本的に年1回です。しかし、術前に歩き方の悪かった人は術後にその癖が出る可能性があるので、しばらくは月に1回~2回チェックするようにしています。また当院では、手術を受けた患者さんのアフターケアとして、年2回「友の会」を開催し、生活に役立つ情報を発信したり、患者さんの相談にのったりしています。

退院後、人工関節を長持ちさせるための留意点はありますか?

退院後は、まずは体重コントロールを
心掛けてください

まずは「太らないこと」です。体重コントロールを心掛けてください。運動は、飛んだり跳ねたりするような衝撃の強いスポーツは控えた方がいいでしょう。ゴルフや水泳などは大丈夫ですが、何かスポーツや活動を始めるときは、事前に医師に相談いただく方が安心です。また、高齢になるとどうしても転倒のリスクが高まりますが、人工膝関節の場合は骨折に繋がる可能性もあるため、転倒は非常に危険です。ご自宅での転倒リスクを極力下げるためにも、床の段差をなくしたりベッドを使用したりするなど、ご自身の住環境を整えるようにしてください。できれば洋式の生活にしたほうがいいので、法的補助などを活用するといいでしょう。ソーシャルワーカーに相談すれば、行政への手続きなど、親身に手伝ってくれるはずです。

膝関節の痛みに悩んでいる人にアドバイスをお願いします。

手術をする患者さんの年齢層は60代後半~90代です。以前は70代が一番多かったのですが、今では80代の人の方が多くなっています。それだけ、活動性が高い高齢者が増えてきたということでしょう。実際、頭も体もお元気で膝だけが悪いという患者さんは多く、そういう患者さんは、術後の生活を元気に楽しんでいらっしゃるようです。今や「歳だから仕方がないわ」と諦める時代ではないのでしょう。一方で、「再置換が怖いから、手術は70代まで待とう」と考えて、若い頃から痛みを我慢する必要もないと思います。人工関節の耐用年数は延びていますから、60代で手術をしてもそのまま人生を全うできる可能性は十分にあります。何よりも元気なうちに手術する方が、術後の機能回復が期待でき、より生活の充実が図れると思いますね。
なお、手術には100%安全なものはありません。人工膝関節置換術もまれにですが、感染症などの合併症が起こることがあります。手術に臨む際にはこのようなリスクをきちんと理解することが大切ですが、リスクを回避するためには、施設を選ぶときの一つの目安として、手術件数を参考にするとよいでしょう。やはり症例数の多い施設の方が、医師もスタッフも手術に慣れており、万が一の状況に陥った際も、その対処方法を心得ていることが多いからです。その他、医師も患者も人間ですから相性があります。人工膝関節置換術は、その後一生のお付き合いになる可能性が高いので、じっくりと医師の話を聞き、信頼関係が築けるかどうかを判断しましょう。


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