関節治療の専門医に聞いてみました!

第150回 骨切り術と人工股関節置換術 状態に合わせて最善の方法を選択しよう

ドクター
プロフィール
専門分野:股関節外科、人工股関節
資格:日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
エリア 埼玉県タグ
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渡會 恵介 先生

変形性股関節症の患者さんは、長い年月、痛みや動きづらさを抱えてきた人たちがほとんど。「手術は怖い」としり込みしていないで、今の状態を改善するのにどんな方法があるか、もう一度股関節の専門家に相談してみませんか。「ひと口に手術といっても、いくつもの種類と方法がある」と話す渡會恵介先生にうかがいました。

多いのは成長過程における寛骨臼形成不全

股関節の痛み、歩きにくさや、動きに制限を感じて生活に支障をきたす変形性股関節症は、もともと寛骨臼形成不全がある人に多いことが知られています。寛骨臼形成不全とは,成長過程で股関節の屋根の部分の発育が不十分な状態で、女性に多いのが特徴です。こういう方の全てが若い頃から症状が出るわけではありません。高齢になって初めて痛みや違和感に気付き、そういえば、ずいぶん前から股関節が硬くなっていたと思い出す方もいます。一般的な変形性股関節症であれば、レントゲンで股関節の状態を確認するだけで診断が付くと思います。
股関節の障害を起こす病気は、ほかにも特発性大腿骨頭壊死症や関節リウマチなどがあります。昔の股関節の骨折が原因で起こることもあります。さらに骨粗しょう症の影響で股関節が急速に壊れて、強烈に痛くなる急速破壊型股関節症も増えています。それらが疑われれば、MRIやCTなどのもう少し詳しい検査が必要なこともあります。痛みの原因が分かれば、それぞれの対応法をアドバイスすることができます。

痛みが和らいだら筋力トレーニング

まず、痛みや炎症を和らげるために、痛み止めの薬を使います。股関節の痛みは、動かなければ一時的に楽になりますが、動かないと筋力はすぐに落ちてしまいます。
筋肉は、関節にとって鎧(よろい)のようなもの。その鎧が薄ければ薄いほど、関節にかかる負荷が強くなり痛みの原因にもなります。ただ、急に体操を始めたり、毎日ウオーキングをしなくちゃと頑張ってしまう人がいますが、かえって痛みを強くしていることも多いのです。特に股関節を柔らかくしようと深く曲げたり、捻ったりするストレッチには注意が必要です。痛い時には無理をしないで、運動や体操はほどほどにしてください。そしてご自宅でできる無理のない筋力トレーニングを医師や理学療法士から教わってください。
診断が付いたら定期的に通院して薬をもらい、レントゲンを撮るなどして股関節の状態を継続観察していきます。
痛みが和らげば,筋力トレーニング,水中ウオーキング,エアロバイクなどで筋力をつけることが有効です。
それでも痛みが取れずに、動くのがつらい、生活に支障がある場合は、手術を考えます。とはいえ、レントゲンで見て股関節の状態が悪いから、あわてて手術をしなくてはいけないということではありません。手術は、股関節の痛みを改善したいけれど、それ以外の方法がないという場合の選択肢です。

比較的若く股関節の状態がいい人は骨切り術

骨切り術(寛骨臼回転法)

骨切り術(寛骨臼回転法)

手術にも、骨切り術と人工股関節置換術の二つの方法があります。一般的に、比較的若くて活動性の高い人には骨切り術を行います。適切な時期に骨切りを行えば,将来的に人工股関節置換術に至らないですむ人もいます。
骨切り術は、入院期間が長く、手術後のリハビリも大変ですが、以前に比べると手術の方法は非常に進歩しました。特に、寛骨臼形成不全が分かっているけれど、股関節の状態はそれほど悪くない初期の状態の人には、とても成績がいいので、現在は30~40歳代の人を中心に行うことが多い方法です。
骨切り術にもいくつかの方法があります。多くの場合、骨盤側の屋根に当たる部分を切って、寛骨臼のかぶりを良くし、形成不全を改善する方法を行っています(寛骨臼回転骨切り術)。関節の状態によって、どの方法を選択するか、我々医師の腕の見せどころかもしれません。患者さんにとっての最善の方法を選びますが、今の状態だけでなく、将来的な人生を考えたうえで、どんな治療法、どんな手術をすればいいのか、左右の股関節について検討したうえで治療方針を決めます。


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