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専門医インタビュー

股関節の痛みが強く生活に支障が出てきたら、人工股関節置換術を行うタイミングです

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東京都

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北海道大学医学部卒業後、東京大学整形外科入局。以後、国立身体障害者リハビリテーションセンター、都立広尾病院などの病院に勤務、東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科病棟医長・同特任講師などを経て、現職に。日本整形外科学会、日本股関節学界、日本人工関節学会、関東整形災害外科学会、日本リハビリテーション学会所属。変形性股関節症の会「のぞみ会」電話医療相談専門医

この記事の目次

人工股関節置換術について教えてください。


人工股関節置換術とは、骨盤側と大腿骨側の傷んだ部分の骨を削り取り、人工の股関節と取り換える手術です。人工股関節は、金属製のステムとボールとソケット、ソケットの内側にはめ込むポリエチレン製のライナーでできています。このライナーは、軟骨の役目を果たしているので、ボールをライナーに組み込むことによりスムーズな関節の動きが得られます。人工股関節置換術の大きな特徴は、劇的に痛みが取れることです。痛みが楽になると動きやすくなり、生活の幅が広がります。仕事も含めて、通常の社会生活を行うことができるようになります。

つまり、股関節の痛みが強く動きが制限されるために「普通の社会生活が送れない」もしくは「旅行などといった自分の好きなことができない」など、日常動作の不具合を解消するための手段として、メリット・デメリットを理解したうえで人工股関節置換術を検討していただきたいと思います。人工股関節置換術は、30~80代と幅広い年齢層の人たちに行われています。以前はインプラントの耐久性の問題で、60歳以上の人でないと手術を行わないという時代もありました。現在は、股関節の痛みが強くて社会生活に支障をきたしているのであれば、30代でも人工股関節置換術を行う人はたくさんいます。全身状態が非常に悪くて麻酔がかけられない人、感染しやすいような病気を持っている人、筋肉や神経に力が入らない人などを除いて、ほとんどの人は人工股関節置換術を行うことができます。

人工股関節置換術を行う手順を教えてください。

3Dテンプレートによる術前計画の画面

外来で800cc程度の自己血を採血して入院

まずは全身の健康状態を調べる検査を行った上で、術前計画を立てます。外来ではCT検査を受けてもらい、そのCTデータをもとに、3Dの術前計画ソフト(3Dテンプレート)を使って、コンピュータの画面上で患者さん一人ひとりに適した人工関節の種類やサイズ、また手術方法(アプローチ)などを検討します。適切な位置や角度に設置するためには、どのくらい切るとかどこから削るなど、患者さんの状態によって細かい手術の方法は異なります。その後、麻酔科の外来を受診して検査を受けてから、800cc程度の自己血を採血して入院です。入院は、手術日の前日になります。

手術は計画に沿って行われ、概ね1~2時間で終了します。人工股関節置換術は基本的には片方ずつ行いますが、患者さんの状態によっては左右同時に行う場合もあります。手術は仰向けに寝ていただき、筋肉をできるだけ切らないよう、前方からアプローチします。後方からのアプローチよりも前方からの方が筋肉を切る量が少なくて済みますし、術後の回復がスムーズで歩行の安定が早いという印象があります。傷口は前方からの場合は10cm程度、後方からの場合は15~20cmです。また、後方からアプローチすると、日常生活の中でしゃがんだりする姿勢のときに、人工関節が後ろ側に脱臼してしまう危険性があります。前方から切って挿入した場合には、その心配はありません。

手術の合併症には何が考えられますか?

人工股関節置換術の様子

人工股関節置換術後の合併症には、血栓症、骨折、脱臼、感染症などがあげられます。中でも無茶な動きをして転んだり、頑張って動きすぎて骨折や脱臼をしたりしてしまうのを一番心配しています。また年齢が進むにつれて、特に女性は骨粗鬆症が増えてきます。骨粗鬆症でも人工股関節置換術を行うのには問題はありませんが、その後年月が経つと骨が脆くなってしまう人もいます。あまり骨がスカスカになると人工関節が緩んでしまうこともあり、そうなると人工関節を入れ替えるための「再置換術」を受ける必要が出てくる場合もあります。再置換術については、活動量が多く若い年齢で手術を行った場合にも頭に入れておく必要があります。それでも定期健診を怠らず、早めに処置ができれば、一部分だけを取り換えることも可能です。手術を受ける前には医師から「インフォームドコンセント」と呼ばれる術前説明がありますが、合併症についてはそこで、患者さんやそのご家族に対し丁寧に説明をします。


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