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専門医インタビュー

手術は怖がらずに、まずは医師と相談を!人生の幅を広げるためのMIS人工膝関節置換術

  • 松本 忠重 先生
  • 本田病院 院長 整形外科専門医
  • 03-3718-9731

東京都

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聖マリアンナ医科大学卒業後、昭和大学医学部整形外科入局。菊名記念病院勤務を経て、2008年、本田病院の新院長に就任

この記事の目次

中高年の特に女性に多い変形性膝関節症。「人工関節の手術を勧められたけれど、なんだか怖いし、もう少し我慢しようかな…」と治療を先延ばしにしているうちに、いつの間にか痛みで歩けなくなってしまう人は決して少なくありません。車イスが必要になるまで手術を避けていると膝周辺の筋力が落ちてしまい、手術を受けても回復が思うように進まなくなってしまいます。「人工膝関節置換術は、この先よりよい人生を得るために行うもの。患者さん一人ひとりの希望や背景を見極めながら、その人に合った治療法を決めることが大切です」と話す本田病院 院長の松本忠重先生に、手術を考えた方がいいタイミングや筋肉をできるだけ温存するMIS人工膝関節置換術などについてお話を伺いました。

歳を取るにつれて、膝に不具合を訴える原因について教えてください。

軟骨がすり減ると骨がぶつかり、硬くなって骨棘という棘ができます

中高年以降の人で、特に外傷はないのに膝が痛い・曲げ伸ばしがスムーズにできないなどと訴える人の多くは、加齢による変形性膝関節症だと思われます。これは、膝関節の軟骨がすり減ったために骨と骨が直接ぶつかり、骨が硬くなって「骨棘(こつきょく)」という棘や骨の中に水の入った空洞ができ、痛みが出てくる病気です。急に歩けなくなることはありませんが、徐々に痛みが強くなり気が付いたら動きづらく、歩くのに支障をきたすようになってしまったというケースが多くみられます。腰痛などで通院している人が膝の調子も悪いと訴えて早めに診断がつく場合もありますが、我慢に我慢を重ねてようやく受診をしたという人や、近所の開業医で治療を続けていたが痛みが取れないからと紹介されてくる人もたくさんいます。

変形性膝関節症の治療法にはどのような方法がありますか?

変形性膝関節症のX線(正面と側面)

海外では、痛みが強くレントゲンで膝関節の軟骨の減少などが確認できれば、なるべく早い段階で人工膝関節に置き換えて自立した生活をしようという考え方が主流ですが、日本ではまず保存療法を行います。薬物療法、理学療法、ヒアルロン酸の注射など、いろいろな保存療法を試した上で、それでも改善がみられない場合に人工膝関節置換術を考えるのが一般的です。治療法の選択は、医師だけでなく患者さんがどのような治療を望んでいるのかが決め手になります。変形性膝関節症は、誰でも手術が必要になるほど進行してしまうわけではありません。大切なのは、レントゲンなどの画像で見る軟骨の変成や骨棘の出方、関節の変形などと、本人の症状の強さが関係しているかどうかという点です。患者さんの痛みの状態などをじっくり聞くとともに、改めてレントゲンなどの画像診断で膝関節の状態を確認します。医師が手術した方がいいと判断したとしても、まずは本人の希望を聞くことに時間を割きます。レントゲン所見と痛みの症状をよく踏まえた上で、医師は治療方針を考えます。

手術を考えた方がいいタイミングを教えてください。

車イスや介助が必要になるくらいまで我慢を重ねて手術を避けるのは、あまりお勧めできません。痛みを我慢していると自然と膝をかばって体重をかけなくなるので、膝周りの筋力が落ちてしまいます。術前の筋力の程度によって術後の回復度合や可動域は違ってきますので、適切なタイミングを見計らって手術を受けるのがよいでしょう。また、土台となる骨が弱いと人工関節は緩みやすくなってしまいます。骨にはある程度の負荷がかかることが大切で体重という負荷を加えることで骨は強くなるのですが、普段から歩いていないと骨はどんどん脆くなってしまいます。変形性膝関節症の症状が出ている人の多くは、骨粗鬆症にかかりやすい年齢でもあるため、骨の状態にも注意が必要です。

なお、整形外科の疾患は命に関わるものではありません。手術をすることによって、どれだけ生活の質(QOL)を上げることができるかが大きな目的となります。「もっと外に出たいけれど、痛みがあるから出られない」という人には、「人工関節にすれば買い物や旅行などにも行けるようになり、生活の幅が広がる可能性が出てきますよ」と説明します。痛みのために職場で立ち仕事ができないという場合には、多少若い人でも早めに人工関節にすることで仕事を続けることができるようにもなるでしょう。逆に、家でじっとしているからこのままでいいという人であれば手術は必要ないかもしれません。人工膝関節置換術はよりよい人生を得るために行うものであり、患者さん一人ひとりの希望や背景を見極めながら行わなくてはなりません。


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