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人工関節とは

コラム17 多くの女性が直面する、加齢とともに増すひざの痛み その原因と治療法について学びました

開演前から、ひざに関心がある多くの参加者が集まりました

2013年10月19日(土)、北海道札幌市の「共催ホール」にて、市民公開講座「ひざの痛みの治療法と改善」が開催されました。講座は、中高年によく聞く「膝の痛み」の原因である「変形性膝関節症」に加えて、同じく女性に多い関節疾患「関節リウマチ」の治療法について、桑園整形外科理事長・院長の東裕隆先生が分かりやすく解説、「変形性膝関節症と関節リウマチ」「保存治療について」「最新の人工関節置換術について」の3テーマでお話いただきました。また、同院の看護師長である玉置千春さん、整形外科リハビリテーション部長の佐々木由花子さん、同院事務の長崎まやさんによる、術後の生活やリハビリ、医療費に関する講演も行われました。今回は、定員550人のところ、1000人を超す応募があった市民公開講座の様子について、紹介します。

女性に多いひざの病気「変形性膝関節症」と「関節リウマチ」

東先生は穏やかな親しみやすい話し方で、分かりやすく説明いただきました

開演ブザーが鳴り、司会を務める宮田圭子さんのあいさつの後、大きな拍手とともに桑園整形外科理事長・院長の東裕隆先生がステージに登場。早速、膝関節を内視鏡で見た写真や、大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)と脛骨(けいこつ・すねの骨)と膝蓋骨(しつがいこつ・お皿)の3つが組み合わされてできていることが分かる膝関節の図解をスクリーンに映しながら、丁寧な説明が始まりました。
やがて、話は本題である「変形性膝関節症(膝OA)について」に移りました。「膝OAとは、膝関節のクッションである軟骨や半月板がすり減って、関節の表面がデコボコになり、滑らかな動きに障害が生じ、炎症が起きたものです」。発生頻度は、50歳を超えると急激に増加し、60歳以上の8割はエックス線検査で異変が認められ、4割に症状が見られるとのことです。「患者さんが一番痛みを感じるのは歩行時で、あとは、階段昇降時、立ち座りの動作など。天候や湿度によって痛みを感じる場合もあります。なんとなく膝が重苦しいというのも症状のひとつです」。
続けて、レントゲン写真を見ながら、膝OAの進行度について解説が始まりました。「膝OAの人はだんだんО脚になっていきます。正常な人は、体重の荷重線が膝の真ん中か少し外側にかかりますが、О脚だと荷重線が膝の内側にずれて、なおさらО脚が進行してしまいます。ひどくなる前に予防することが大事です」。
原因、悪化の要因についても、「加齢、筋肉の衰え、О脚&X脚、肥満、肉体労働、体質や遺伝、スポーツなどの膝への負担、膝周辺の外傷、足に合わない靴、ホルモンの関係もあげられます。これらの中で一番良くないのがリスクを4倍にする肥満です」と説明があり、多くの参加者が納得されているようでした。
また、膝OAが進行するほど筋力が低下したり、水がたまりやすくなったりする上、たまっている水の中には軟骨を溶かす成分があるため、早く水は抜いたほうがよいとの説明もありました。
次に、日本で60~70万人が罹患しているといわれる「関節リウマチ」(RA)について。こちらも女性の発症は男性の5~6倍で、原因はよく分かっていないそうですが、遺伝やウイルスなどの感染、ホルモンの作用なども関係しているかもしません。「関節リウマチは急激に関節が破壊されてしまうため、早期発見、早期治療が大事です」。

傷が小さく、患者の負担が少ない「人工膝関節置換術」

さて、気になる治療法についてです。「変形性膝関節症、関節リウマチ、どちらの治療も保存治療と手術という方法があります」。
症状がひどくなければ、まずは保存治療から始めます。保存治療には、日常生活の動作の指導(正座、あぐら、しゃがむ、階段昇降、過度なスポーツなどはNG)、杖や膝のサポーター、足底板(外側が高くなっている靴の中敷き)などの装具療法、飲み薬や貼り薬の薬物療法、リハビリなどがあります。肥満脱却のためのダイエットもこの中に入ります。「保存療法で一番効果があるのは、薬物療法のヒアルロン酸の関節内注射。炎症がひどい場合は、少量のステロイド剤を混ぜることもありますが、糖尿病などの持病がある方には使えないので、事前に患者さんから持病などのヒアリングをきちんと行います」。
「保存療法でも痛みが緩和されないとなると、最終手段が手術になります。人工膝関節置換術は、デコボコに変形した関節の表面を取り除き、人工関節に置き換えるもの。残りの人生を痛みなく楽しみたいという人は検討してみてよいと思います」。実際に手術前と手術後のレントゲン写真を見ると、О脚がまっすぐになっていました。「入院期間は2~3週間。昔と異なり、患者さんの負担を少なくするための技術が進歩しています。傷も小さくて済みますし、抜糸も不要。術後は膝がよく曲がるようになります。また、症状が軽い場合は、一部だけを置き換える部分置換も可能です」。
参加者の多くは手術への関心が高いようで、細かくメモを取る人の姿が多く見られました。

熱心にメモを取る人も多数いらっしゃいました
リハビリについて、スタッフが実演しながら教えてくれました

術後のリハビリや気になる医療費についても分かりやすく説明

約1時間の東先生の講演が終わると、引き続き、桑園整形外科のスタッフによる入院やリハビリ、費用などに関しての講演が行われました。まず、同院の看護師長である玉置千春さんが「手術後の日常生活動作と痛みについて」という演題で、手術の流れや術後のリハビリの様子などを分かりやすく説明されました。次に、同院のリハビリテーション部長・佐々木由花子さんによる「リハビリについて」。保存療法を行っている人、手術をした人それぞれのリハビリ方法をスタッフが実演しながらレクチャーしてくれました。そのあと、同院スタッフの長崎まやさんが人工膝関節置換術の手術を受けた際の医療費について解説され、人工膝関節置換術は医療保険の適用になるだけではなく、高額療養費制度の対象にもなるとのことでした。
講座の最後は、再び先生がステージに登場して、事前に募集していた質問について答えてくれる質疑応答タイムです。「体重を落とせば痛みが減る?」の問いには「落として痛みが減るのは、軽度か中度の人。落とすだけでなく、筋力アップも必要」、「膝が痛いけど筋力をつけるためにフラダンスや登山などをするのは良い?」には「筋力をつけるのに膝の痛みを我慢するようなスポーツをしてはいけません。水泳、ゴルフ、ウォーキングなど膝にやさしいものにしてください」、「人工膝関節に年齢の制限は?」には「年齢に上限も下限もありません。患者さん一人ひとりの状況によります。寝たきりだとか、筋力がないとなると手術をする意味がないですよね。これは生活の質を上げるための手術ですから」など、全部で17の問いに回答されました。予定時間を迎え、講演は終了となりましたが、「まだ質問があるという方のために」と急遽、先生が受付で個別相談に応じてくれることになり、終演後も多くの人が並んでいました。参加者に感想を尋ねると、「分かりやすかった」「痛みが気になっていたので今日の話を参考に一度病院へ行きます」「リハビリ体操を家でやってみます」という声が多く聞かれました。

先生プロフィール

桑園整形外科
理事長・院長 東裕隆先生

1992年北海道大学医学部卒業後、市立札幌病院救急部、北海道大学医学部整形外科医局などを経て、市立札幌病院整形外科副医長に。2007年桑園整形外科を開院。日本整形外科学会認定整形外科専門医。

参加者の声

K.Y.さん(右)、S.Y.さん
「病院に通っていても知らなかったことが聞けて良かったです。今後の参考になりました。」
Y.K.さん
「素晴らしい講座でした。話を聞いて膝に負担をかける無理な運動はやめることにしました。」
K.O.さん(右)、K.Y.さん
「膝が痛かったので、リハビリが参考になりました(K.O.さん)。
とても勉強になりました(K.Y.さん)。」
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